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[コメント] 桜、ふたたびの加奈子(2013/日)

初めて魅せるヒロスエの狂気。狂ったヒロスエも美しい。と思い込む事にした。リンネサイコー。
ピロちゃんきゅ〜

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







とにかく、辛く、悲しく、重い。このどんより感は『折り梅』以来かもしれない。このどんより感をもう1回、別の映画で体感したいような奇特な方がいるとしたら、まず『折り梅』を見ていただいてから、このコメント、要は『折り梅』のネタバレありのコメントを読んでいただきたい。いや、そもそも、この二つの映画を両方みているなんてのは日本で何人かしかいないかもしれない。どうせ観ないでしょという人だけがコレを読んで欲しい。っても、たいしたネタバレでもないから別に気にする事は無いと思うけど。要は、この二つの映画に共通するのは、話の前半をトコトンまで追いつめて追いつめて落として落としてから、現実を受け止めて前向きに生きるという救いの結論を迎える点だ。しかし、『折り梅』が諸行無常的に現実を受け止めてこれからの人生を前進するのに比べ、こちらの映画は非現実を受け止めて人生を前進させる。いや、非現実なんだけど、映画の中では現実として扱われているから、現実を受け止めて前向きに生きているわけだ。が、これは本当に救いになるのだろうか。この映画における輪廻転生というキーワードは、この輪廻転生を受け入れさえすれば、本気で信じさえすれば救われるという構図を持つ。いや、救われるというか、人の死というものに対して色々考えさせられたあげく「輪廻転生」で良かったね!みたいな結論で、さらにさらに、トゥルルルという電話のオチでスクリーンの外にいる我々までも救おうという強欲さを見せる。いやまあ、人によっては「輪廻転生?うん、当たり前じゃん。」という真実なんだろうけれど、まてまて、まだオレ輪廻転生に納得できてない。「生まれ変わりだったんだー!」を信じれば何てことはない事かもしれないが、そうじゃなければかなりキツイ。なにスイッチ入ってんのよ状態で何にも救われないままなのだ。最初から最後までファンタジーなら生まれ変わろうが天の声だろうが気にならないと思うけど、「生まれ変わりだと思うの」ってヒロスエが言う所で、オレの視点はまんま吾郎ちゃんのおいてけぼり感状態なわけだよ。むしろ、「お前おっかねえよ、こんなに可愛いのにおっかねえよ!」状態なのだよ。まあ、さすがにオレだったら別れようとは考えないだろうけど、奥さんとしては微妙になるのは確かだ(夜は別モノ)。身体の関係を拒絶されてもじっと我慢。きっと時間が解決するさってのはオレも同感だ。ただ、もっとハッキリしたハッピーを提示してくれないと、あまりにやるせない。原作を読んでないので判らないが、普通ならば、こんな話はもっとお菓子っぽいファンタジー映画になるはずだ。もっともっと都合よく生まれ変わってみんながハッピーになりました〜みたいな。でも、この映画は「輪廻転生」というテーマをどこまでも真剣に「本当なんですよ!」と訴えかけてくる。もはやファンタジーではない。どちらかというと宗教映画に近い。人の死というものに対しての救いが魂の輪廻であるという救いはある意味、生きる死ぬという生物的な運命への逃げだと思う。どうせ誰でもいつかは死ぬしそもそもこの世界に自分が存在している意味なんかたいした理由もない。−−それでも生きてゆく−− まあ、宗教を否定するわけじゃないんだけど、「魂の輪廻」なんていう人間にしか思いつく事ができないご都合的な死生観を鵜呑みにするほどオレの命に特別なものを感じる事なんかできないよ。ま、死なないとわからないけど。死んでから考えようと思うし、死んでからみなさんに電話かけまくってやろうと思う。ほーら、これでみんなもハッピーだ。

というか、電話のオチは見ている我々だけに明かされたネタバレなわけだが、ここだけ「リアルに現実じゃない」。これはホラーだ。魂の実体化でもなく、魂が電話かけて喋っちゃうんだ。かなりの霊現象なのだよ!ここははっきり言ってドン引きだ。霊が見えるとか感じるまでは許そう。そう信じる人には見えるだろうし感じて当然だから。だから、あそこはヒロスエが首つったあと、なぜか助けられてベッドの上でヒロスエが「加奈子が助けてくれたの!」と隣の見えない加奈子ちゃんに礼を言うだけでよかったんじゃないか。「いよいよヒロスエが狂った」感全開で。

しかしなぁ、そんなこんな思いもなにも、いきなり子ども持って走り出した時はびっくりしたなぁ。いきなりクライムムービーになるのかと思ってドキドキした。「ヒエー!」と声もあげたよ、他に客入ってなかったし。こんなに精神的に追い詰められる「狂気」を見せるヒロスエはなかなか無い。正直いって、ここまで追い込む役柄になりきってしまって、実生活での母親ぶりに影響は出なかったのだろうか。むしろそっちを心配したわけで、びっくりしたなぁもう。

問題は「きれいなヒロスエ」なのに「救ってあげたい!」と思わせる母親役ではなかったという事だ。まあ、こちら側としては宗教に狂ってしまった奥さんを傍観する夫という立ち位置に近いかもしれない。今、オレが最も恐怖しているのは何時の日かヒロスエが突然「山本太郎さんと一緒に出馬します」とか「半島はわが祖国」とか「地震が起きるのは米軍の仕業」とか言い出す事ぐらい。切にそんな事にならないように祈るばかり。逆にそうなったら傍によりそって目の前に正座させて3日間ぐらい説教したい。宗教ぐらいなら許せるしどんどんやらせるよ。資産は無いから搾り取るも何もないけど。違うものを絞ってほしいな。最近すっかり体がアレでアレがアレだけど。ヒロスエが相手なら頑張れると信じたい。せめて試させてもらいたい。そしたら死んでヒロスエの子供になってやってもいい。そしたら毎日いっしょにお風呂に入って一緒のベッドでもにゅもにゅしたい。んー輪廻転生もいいもんかもしれないな。相手もオレもハッピー万々歳じゃないか。

(評価:★5)

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