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[コメント] 鬼火(1963/仏)

上がり下がりの激しさに憧れる事は(大人になったら)ひどく危険な遊びだ、と思う
torinoshield

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







ある音源をサンプラーでパソコンに取り込みグラフにすると左から右に時間、上下に波形の大きさが表示される。上下に波形が大きいと「音が大きい」、その波形の周期が短いと「かん高い音」周期が長いと「低い音」となる。

大抵自然界に存在するものが発信する音は最初短時間に大きく振れ次第に波が緩やかに、波形周期も長くなる。つまり音量は最初は大きく次第に小さく、音質は最初かん高く次第に丸くなる。教会にある鐘を一回叩いた音なんかを想像するといい。

実はこれは人間にも当てはまるのではないか、と前から思っていた事だ。グラフにすると時間は年齢、上下方向が楽しい、哀しい(躁鬱とも言えるが)と置き換えればいいだろう。子供の時は哀楽が大きくまた短時間でそれが入れ替わる。大人は躁鬱の落差が小さいが周期が長い。

思うに酒や薬は躁状態を増幅させるが一度振り上がった波形は反対(鬱状態)にも大きく振れる。過去の友人達は歳と共に波形が緩やかになっているのに主人公は酒に溺れたり自分を共振させた振幅の激しい友人達を求めているようだ。

大人の場合振幅の周期は長くなるはずだ。波形の振幅が大きいということは躁、鬱状態が延々と続くことになる。青年期に起こるならその周期が短い為に乗り越えられても30を超えた大人が同じ振幅を求め期間が倍になるのであれば危険だ。この映画はそういう意味でひどくリアルだ。ちなみにロック・ミュージシャンにこの手の人が多い。

ところで非常に有名なサティのピアノ曲。メロディー自体がとってもネタバレ。死の旋律とでも言えるか。

(評価:★3)

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このコメントを気に入った人達 (2 人)moot uyo[*]

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