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[コメント] 楽園をください(1999/米)

結局必要なものは、銃と、馬と、ちょっとした家財道具と、一人の友達と、そして家族。アン・リーがアメリカの金とスタッフを使って、アメリカのそれと似て非なる、アジアの個人主義原理を高らかに宣言している。
ジェリー

**ネタバレ注意**
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この映画においては、南北戦争とは、夜盗か私怨の徒による殺し合いでしかない。アメリカ資本がよくもこんな歴史観を許したものだ。

戦争の大義など、戦争開始と同時に吹っ飛んで、あとはどちらかが死んでしまうか降参するまでのひたすた撃ち合い殺し合うプロセスでしかない。こうした醒めた戦争観をアメリカ人は比較的毛嫌いする。個人主義的の国と言われながらもアメリカは、意外にまとまるときにはまとまる国だ。まとまる原理に対する信念も思いのほか熱い。

この映画の中では、こうしたパラダイムとは全く異なるパラダイムでアメリカ人たちが行動する。戦争に参加する動機そのものが個人主義的な連中ばかり。そこに、本質的に百家争鳴の国中国出身(だよね?)アン・リーの歴史観が強烈に刻印されている気がする。アジア人の個人主義は大変に身軽で、合理的だ。財産・家族・友達、それだけ。価値観の葛藤を生みやすい複雑さがない。そのシンプルな原理に従って、全登場人物が実に動く動く! 結婚して家庭を作るという行為の信じられないくらいの軽さ。そこがとても痛快だった。

また、馬を使った戦闘シーンは、空前絶後のできばえ。黒澤は明らかに追い抜かれた。フォードをも超えたか。

(評価:★5)

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