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[コメント] 天が許し給う全て(1955/米)

ロック・ハドソンのさりげない登場の仕方にこの作家の真骨頂が露呈されている。物語が予定調和の始点からではなく、全く無意味の任意の1点から始まる! これこそメロドラマの仕掛けの本質ではないのか。現実界とドラマの錬金術のような化合ぶりが美しい。
ジェリー

もちろん、この始まり方は、物語が全く無意味な任意の一点で終わりうるということも暗示する。つまりこの物語の中の登場人物が、物語の登場人物足りえない可能性も含めて登場人物として造形されている奇跡。ダグラス・サーク小津安二郎に匹敵するくらいに、登場人物に(演じている俳優に、という意味ではなく)対して残酷な作家なのだ。この映画の物語の生起する季節は秋から冬にいたる時期だが、いかにも冬らしい斜光の表現が、この残酷さを甘く美しく彩っている。それは登場人物のための死化粧にも見える。

(評価:★5)

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このコメントを気に入った人達 (1 人)ゑぎ[*]

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