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[コメント] アンナ・マグダレーナ・バッハの日記(1968/独=伊)

映画の理想としての音楽。
ジェリー

映画と同様、音楽は時間芸術である。その音楽を理想として音楽そのものを目指したような映画がこれ。音楽が最後の音符にたどり着くように、このフィルムもまた最後の一こままでたどりついて終わる。その間に、持続と緊張、それに対する停止と弛緩のドラマが展開する。エモーションのライン(持続線)がうねったりまっすぐ進んだり、早く動いたり遅く動いたり、とまったりまた動き出したりしながら。全く物語を中に含まない実に不思議な映画だ。

本物の演奏家を俳優に使うことで、演奏シーンをカットつなぎでごまかす必要がなくなり、アステアのダンスシーンのようなワンカット撮りができた。それが堂々とした安定感を画面に与えている。合間にはさまれるナレーションは天上的な音楽と比べて、見事に世俗的で、陰影に富んだ格調高い画面と面白い対比を成している。こうした対比効果ももちろん音楽をお手本としているはずだ。

(評価:★3)

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このコメントを気に入った人達 (1 人)ナム太郎[*]

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