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[コメント] AIKI(2002/日)

真摯でポジティヴなメッセージを伝えたいという情熱も空回りしすぎると、クソ退屈な授業をなんとか面白おかしく聞かせようと苦心する教師の哀れさに見えてしまう。それと、ともさかりえの不思議少女……。
crossage

「柔よく剛を制す」合気柔術の素晴らしさを、剛のスポーツの代表格ともいうべきボクシングとの比較で描くという狙いは悪くないし、車椅子生活者の挫折と成功の物語を、いたずらにウェットに流れることなくカラリとユーモラスに語ろうとした姿勢にはすこぶる好感を持てた。でも、行定勲監督の『GO』にも感じたことだけど、若者受けを狙った安易なキャスティングはもういい加減やめて欲しいとも思う。永瀬正敏松岡俊介我修院達也のわざとらしい使い方には正直ウンザリする。

合気柔術の描き方については、格闘技的なハデさがないから、画面映えさせるための苦労がうかがわれた。でもだからといって、あんな劇画チックにディフォルメした演出にしなくても良かったのではとも思う。とくに大使館における演武会の描写は見てられなかった。相手方の極真拳の使い手とか。このディフォルメも、合気柔術というとっつきにくい素材を一般の人にも受け入れられるようにこしらえた苦肉の策だったのだろうか。だとしたら全く逆効果だし、本職の人が見たら怒りゃしないだろうか、と要らぬお世話かも知れないがそんなことまで考えてしまった。

総じて、ものすごーく地味でつまらない授業を一生懸命おもしろおかしくアレンジして、無関心な生徒たちにもなんとか聞いてもらおうとがんばっている教師のむなしさ、のようなものを感じた映画だった。

それでも、男性陣は軒並み好演していたと思う。加藤晴彦が意外と悪くない役者だということがわかったのはそれなりに収穫だったし、ヤクザ役しか見たことなかった石橋凌は新境地開拓って感じだし、桑名正博は風貌からしてウサン臭い的屋のアンちゃんにぴったりだったし、飄々としたエロ親父っぷりで図太くたくましく生きる障害者を演じた火野正平の演技は全くイヤミを感じさせなかった。でもね、あとひとつ、これは言わせてくれ。

ともさかりえのバクチ打ち、ありえねえよ!

バクチ打ちで巫女でしかも(自称)処女。「穢れているがゆえにもっとも無垢に近い」という女性像と、その女性によって男が救済されるという物語は、娼婦ソーニャがその穢れゆえにマリア様の現身となりえたという『罪と罰』のモチーフ以来の伝統だから、まあそれを踏襲するのは良しとしよう。それから、「奔放な強さを装ってるけど、本当は弱い女の子なの」という人物設定も、その見せ方があまりにベタベタで恥ずかしくて見てられなかったとはいえ、頑張って今風に演出しようという涙ぐましい努力の跡が見られるから、まあこれも良しとしよう。にしても、バクチ打ちのくせにバクチを打ってるシーンがひとつもないってのはこりゃどういうことだ。奇をてらった人物設定もいいが、描写が伴わなければリアリティもクソもない、うわっつらだけのエキセントリック狙いにしか見えないぞ。

あ、原千晶みたいなお姉様なら欲しいとは思いました。婚期を伸ばしてまで不肖の弟のシモの世話までしてやるお姉さん、なんて甲斐甲斐しいんだ。ひとつ、俺のシモの世(略) 

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[021121] ヤクルトホール先行試写

(評価:★2)

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