[コメント] つぐない(2007/英)
映画を見終った人むけのレビューです。
これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。
このストーリーは、その大部分が偶然で成り立っている。
妹・ブライオニーが窓から池の2人を見たのが偶然なら、ロビーが手紙を取り違えたのも偶然、そして2人が愛し合っている図書室にブライオニーが入っていくのも偶然だ。
しかし、ジョー・ライトの演出は、池のシーンは視点を変えて繰り返し見せること、手紙はタイプと自筆の2通を用意すること、図書室は宝石という小道具を使うことによって、観客に偶然と思わせるのをことごとく回避している。
面白いのは、セシーリアとロビーの2人の間にも、上記の出来事による偶然が働いていた点である。池での一件があって書かれた手紙によって、2人はともにあの図書室に導かれたのだ。
しかし、その2人の偶然は、すべてをブライオニーが見ていたという別の偶然によって破滅するのだ。そしてそのブライオニーの偶然は、ブライオニー自身によっても取り消すことはできなかった。彼女が2人を再び結びつけることはついに叶わなかったのだから。
実際のところ、ロビーがダンケルクで、セシーリアが地下鉄の爆撃で命を落とすのも、言ってみればやはり偶然に過ぎない。しかしその疑念を打ち消すのが、看護士になったブライオニーが、同僚に「片思いをしたことがある」と話すシーンである。
かつて、(わざと)川に落ちた彼女を救ったロビー。そのロビーが、姉とただならぬ関係になった。その時点で、彼女にとってロビーは「過去の人」となったのだ。だからロビーは罪を着せられなければならず、死ななければならなかった。たとえ後でそのあやまちに気付いたとしても、もはや止めようのないほどに…。この演出は、2人が亡くなることさえ必然にしてしまったのである。
というわけで、これは「偶然も積もり積もれば必然になる」という話なのでした。ああそれにしても、シアーシャ・ローナン・ロモーラ・ガライ・ヴァネッサ・レッドグレイヴは似すぎだよ。
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