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[コメント] ゾンビ(1978/米=伊)

この映画は人間に襲い掛かってくるゾンビよりもゾンビを殺していく内に人間性を失い、暴力性を増殖させていく人間の方が恐ろしいということを描いた作品なのかも知れない。
わっこ

**ネタバレ注意**
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ゾンビ・アクション映画。『ナイト・オブ・ザ・リビング・デッド』の続編。

ナイト・オブ・ザ・リビング・デッド』のスケールを大きくしたような作品で、大型ショッピングセンターを舞台に無尽蔵に現れるゾンビの群れにはすさまじいものがあった。

前作はゾンビ映画と言うよりは宇宙人侵略映画のような雰囲気でゾンビの存在が中途半端な印象があったが、今回はゾンビというキャラをストーリー展開に上手く生かしていて、ストーリー構成、演出が非常に優れていた。この作品を観て、このシリーズは、人間に襲い掛かってくるゾンビよりもゾンビを殺していく内に人間性を失い、暴力性を増殖させていく人間の方が恐ろしいということを描いた作品なのかなと感じた。前作ではその部分の描写がやや弱かったのでそれほど気にならなかったが、考えてみると、スーパーを独占する主人公たちや主人公たちのテリトリーとなったショッピングセンターで終盤になって現れた強盗団がゾンビを虫けらのように殺すところはある種、ホラー映画というよりも反戦映画的なメッセージが込められている気がする。

しかし、なんといってもこの映画で素晴らしいのはゾンビの集団を陽動しながら退治する戦闘シーンが実にリアルな上にかっこいい。特に序盤の売り場へ行く時や出入り口を封鎖する時の戦闘シーンが秀逸。また、仲間がゾンビに襲われる時や仲間が噛まれ、いつゾンビ化するかわからないところや、終盤の強盗団とゾンビ集団の襲撃の緊張感と恐怖感も申し分ない。ゾンビも服で種類を色々と分けているのも新鮮に感じられた。

映画としては、主人公たちがショッピングセンターを独占するまでの演出が秀逸でストーリー的には少々長い気もしたが、出来はかなりいい。世界観も全編に漂う世紀末の雰囲気がしっかり描かれ、登場キャラも特徴がきちんと整理されていて感情移入できた。役者の演技も申し分ない。

惜しむらしくは人間ドラマ部分での描写が思ったより甘めなので、仲間を失うことへの悲壮感があまり感じられなかった点。特に、仲間の一人であるロジャーを主人公の一人であるピーターが殺すところでピーターの罪悪感を描いてもよかったし、ラストでピーターがフランクリンと脱出するところは人間性を最後まで保てた2人が助かったというストーリーとしては素晴らしい展開だっただけに交友関係をもっと描いて欲しかった。逆にいえばあえて意図的に客観的な演出をしたともいえるが。その他ではフランクリンの活躍場面をもっと増やしても面白くなったと思う。

ラストは前作とは反対に前向きでわずかながらも救いの方向性が感じられるところに好感が持てた。

総評としては、単なるホラー映画としてだけでなく、反戦的なメッセージが込められた作品で、極限状況でのサバイバルものとしても、ゾンビ映画としてもなかなか楽しめる映画。おすすめ。

(評価:★4)

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