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[コメント] デトロイト(2017/米)

これもまた『ダンケルク』と同様の体験型と言えるが、当時のデトロイトの空気感と白人と黒人の関係性、そして白人同士、黒人同士の思想の違いなど多様性も感じられて、すでに職人芸とも思える硬派な作品に仕上がった。
HAL9000

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冒頭にアニメーションで前提を説明する手法はよくある形すぎたし、そのクオリティもあまり良くないのはまず残念だったが、そのあとの2時間強は圧巻で、ときおり挿入される当時の映像が編集の確かさと相まって違和感なく繋がっていたのは、本編の迫力ある映像とサウンドのなせる技。

そうして徐々に醸成される没入感の先にあるアルジェ・モーテルでの描写は本当につらいものだった。アフリカ系のベトナム帰還兵があのモーテルで理不尽な迫害を受けるが極めて理性的だった。それは彼の地での経験がそうさせたのだろう。 偶然ながら今作を鑑賞後に録り溜めていた『プラトーン』を観た。こちらも馬鹿をやるのは差別主義者の白人だという描かれ方だが、その背景を観た後では全く頷ける描写だと思った。北軍と無関係の村人に対して出来るはずのない供述を強制する、という構図もまたまったく重なる。

今作は当事者たちへのリサーチをもとに一部は脚色されているが事実に近いものになっているという。 『否定と肯定』でも触れられていたが、被害者側に当時のことを語らせるのは望ましいことではない。しかし語り継ぐべきこともある。記憶のすり替え、曖昧さは常につきまとうことではあれ、そこにいた人たちの証言はより多くの人の耳に届くべきだろう。

アルジー・スミスは特筆されるべき存在感だったと思う。またラリーが聖歌隊にやんわり拒否されてたのは、彼らの世代と背景にあるモータウンが、コアな層からは嫌われていたってことだよね。同じ人種であれ。でもラリーはオールドスクールも敬愛していたし、そういう彼がまた同年代からは浮いていたことがあのモーテルの一室で描かれるのも良い。 Youtubeでは「Algee Smith & Larry Reed - Grow (from DETROIT) 」で今のラリーと演じたアルジーのデュエットが聴ける。素晴らしい。

(評価:★4)

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このコメントを気に入った人達 (2 人)寒山拾得[*] プロキオン14

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