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[コメント] ドッペルゲンガー(2003/日)

リアルドラえもんみたいな話でした。
おーい粗茶

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







引いた画で唐突に振り下ろされる凶器の乾いた打撲音。「パタっ」と訪れるそっけない死。日常のすぐ隣にあって、情感の伴わない恐怖。こういうのが黒沢清監督のポエジーなんだと思います。監督の作品をすべて知っているわけではないので推測ですが、異常をぎりぎりまで平板に描くことで「恐怖」という題材を追求し続けてきた監督の目指すところは「不可知の恐怖」であり、それが逃げも隠れも脅かしもしないがまぎれもない恐怖であるという「ドッペルゲンガー」像に辿りついた挙句、永作博美の台詞のように、怖れるべき対象物に対して「なんだかどうでもよくなってきた」という心境に達して撮りあげた作品という感じがします。

苦しみや悲しみや痛みという実体のない死や恐怖=不可知な恐怖は、怖れるということを自分がやめてしまえば存在しなくなってしまう。怖れることを「もう」やめてしまったヒロインにリードされ、主人公も次第に怖れなくなる。「おれはそんなことのために生きていくんじゃないんだ」というラストでの生き方の大転換は、怖れることをやめてしまった生き方というのが、それまでの生き方とはまるで違うものになったからでしょう。まあ屁理屈はともかく、日常と異常が同じ地平に並んでしまい、死や恐怖が日常からも異常からもどちらからももたらされる中盤以降の描写の筆の勢い、その本気とも冗談ともつかないような死や恐怖に引き付けられ、タイトルを無駄にしたうらみはあるものの、なんだか面白く感じました。

今後監督はどういうスタンスでホラーを撮るのか興味があります。例えば「ドラえもん」や「渡る世間…」のような、ふつうにホームドラマでありながら、寒気のするような作品とか…でしょうか?

(評価:★4)

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