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[コメント] 幻の湖(1982/日)

橋本忍入魂の一作。というかタマシイ込めすぎ。第3者の視点というものが明らかに排除されている。
おーい粗茶

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







自分が見たのがどういうバージョン(劇場公開版とかなんとか)かわからないが、後半の戦国時代のシークエンスが登場するあたりのバタバタした展開を考えると、前半は明らかに冗長過ぎ。湖畔のジョギングシーンは思い入れがあって削れないとしても、シロ(愛犬)を殺したかもしれないというバンドのメンバーの、演奏風景だとか、彼らのアリバイ説明にまでいちいち「画」をつけたりしなくても良さそうなものだ。普通だったら「カット」の指示が入るだろう。また、ヒロインの同僚のソープ嬢(米国人)が、ハイキングの最中に飛んでいく米軍機を見上げ、「(イーグルはまだ実戦配備されていないハズ…)」と突然度肝を抜くようなことを言ったり、ようやく見つけた仇をなぜか「長距離レースの中で倒す」というふうに思い至るヒロインの心理など、作者にはよくわかっている事情がうまく説明できていない。不安定な精神状態の時に湖にまつわる戦国悲話を聞かされ、自分の源氏名の由来の人に関わる話から、深いつながりを感じて激情した人間の頭では「レースで仇を倒すんだ」というような混乱もありえないことでもないだろう、とか考えながら見ていくと、そういう感情の背景とはまったく無関係なはずの、殺されかけている男までがジョギング走りで「ここでスパートして振り切ってやる!」とか言い出した日には、さすがに他人は脱落せざるを得ない。駒沢公園へ向かう道のりを、実際の地理関係と正しくロケしているこだわりぶりに対し、琵琶湖の真上の宇宙空間に「笛」を永久にとどめようとするくだりで、指先で笛の端をひょいとはじくのを見た瞬間「クルクルまわりだすイメージ」を抱くところ、ピタッと止まってしまい、空間に浮かぶ笛ではなく、琵琶湖の絵の上のガラスに置かれたそれをいやでも意識させられる拙さ。こういう「いい」と「ダメ」の線引きさえ、すべては監督の頭の中の世界次第でしかないんだなあ、と一人だけの想像で作られてしまっている作品であることをしみじみ感じる。

美しいヒロイン、恋愛、悲しみ、ヌード、犯罪、サスペンス、女諜報員、伝説、四季の風景美、宇宙、戦国時代、動物…ヒットの要素をあれもこれもぶちこんだと思われるその中に「ジョギング」があったのはこの時代のせいかな? なぜあれほどジョギングにこだわらなければならなかったのだろう?? あと野暮だけど、この物語の着想が「湖の上空、はるか宇宙に漂い続ける一本の笛」に始まっていたとしたら、出発から間違ってる。地球から見て同じ位置であり続けるなら、自転の軌道上、つまり赤道上にあることが条件になってしまう。そんな湖ってあるのかな?いやなくてもそれこそ「幻の湖」でいいわけだ。世界を舞台にしたもっとスケールの大きい話になったかも!

(評価:★2)

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