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[コメント] デビル(1997/米)

多少まわりくどくなっても、ここは今回のドラマの背景を何とか説明すべきと思う。そうでなければドラマがまわり出さないのでは?
おーい粗茶

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







本国以上の人口がアメリカに移民したアイルランド人。本国のテロ活動の最大の支援元はアメリカのアイルランド社会の中に存在する。それと同時に民族的な差別などから、アメリカでは警察官や消防官などの危険な職業に多く従事せざるを得なかったのもアイルランド系の人々である。

アイルランド系警察官の家にIRAのテロリストが居候する、ということは、こういった皮肉な社会状況の縮図となる。この設定を用いながら、これらが引き起こそうとするサスペンスや葛藤を描かないということは作劇上ありえない。これらの葛藤のドラマは、ハリソンにとっても、ブラビにとっても同時に同じ比重で発露するものである。お互いがそれぞれの譲れない立場を有している。スター同士がお互いを主張してうまくいかなくなったというようなことは本当だろうか? もともとどっちにも主張があって、お互いが見せ場を競っても良い設定のように思うのだが? このテーマを描き込むなら、むしろ双方に華を持たせる本にしなければいけないんじゃないかねえ・・・。

それにバレちゃいけないハラハラ、とか、だんだん情が移っていく心理描写も投げやりな感があるし、よしんばアイルランド云々という設定を弱めても、人は愛する人に銃を向けたものに対し戦うべきなのか、という普遍的なテーマに訴求できるわけだ。ハリソンが妻に銃を向けられたことに対し、カッとなるシーンは、ブラビがテロリストになってしまう原点を彷彿させられるのに、なんだかしおしおって終わっちゃうし。何だか監督自身が、はなから躓いているような気がするのだが。

911はIRAは関係ないけど、テロによる攻撃で多くの同朋たる消防士が亡くなったこともあって、アメリカのアイルランド系住民の本国へのテロ支援活動は一気にダウンしてしまい、IRAの武装放棄に繋がっていく。ナイーブなIRA闘志が希望の象徴として仰ぎ見たWTCビルは、その後、彼の思いとは逆の形で戦いを終わらせてしまう象徴となってしまったことになる。映画とは関係ないんだけど、なぜか再三WTCが映画に現われたり、強盗に襲われ警察に電話をかける番号「9・1・1」がクローズアップされる場面が出てくるというのが、映画の神様のなせるわざなのでしょうか?

(評価:★3)

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このコメントを気に入った人達 (2 人)けにろん[*] シーチキン[*]

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