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[コメント] 時計じかけのオレンジ(1971/英)

キューブリック版「新約聖書」。
おーい粗茶

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







主人公アレックスのモデルはイエス・キリストである、多分。正確には無理矢理イエス・キリストにさせられた人間だ。

人は欲望に支配されている。それゆえに罪を犯す。遥かむかし、その罪(原罪)の存在を知ったイエスは、ただ一人だけ人類に課せられたその重荷にもだえ苦しみ、すべての人間の身代わりとなって処刑され、やがて復活する。本作の主人公アレックスが、洗脳後欲望を感じた瞬間まさに時計じかけのように苦痛に襲われるようになり、その後たどる運命はまさにイエスの生涯をなぞっている。

アレックスの部屋に置かれているキリスト像、キリストを鞭打つ妄想シーン、洗脳後に次から次へと誘惑を試させられる挿話、死の前に飲まされる葡萄酒、「善良な」人々から受けるリンチのシーン、ローマ兵のような警察官、そして第9などキリスト教と関係のありそうなシーン・小道具も多い。おそらくキリスト教圏の人にはこれはパロディになっているのだと思う。

キューブリックという監督は、『現金に体を張れ』の「焦燥」も、『フルメタル・ジャケット』の「狂気」も、『シャイニング』の「恐怖」も、『アイズ ワイド シャット』の「SEX」も、そして本作の「暴力」もまるで「標本」のような形にして見せるので、こちらも素直にハラハラしたり、怖がったり、感情が高ぶるような状態にならず、感情が冷え切るような気持ちになることが多いと思う。これはキューブリックの作家的体質にある「意地の悪さ」のせいだと思うのだが、この作品はパロディでブラックコメディの要素があるからか、彼の「悪意」がとてもいいほうに発揮されたのではないかと思う。

(評価:★5)

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