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[コメント] 鳩の撃退法(2021/日)

現実の作家の話と作家の書く小説の話のメタ構造に加えて時間軸の交差。これを見る側に混乱させずに構成した手腕には感心する。
おーい粗茶

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







原作は未読だけど、もとになった原作のストーリーが面白いので、構成に失敗さえしなければ映画としての成功は約束されたも同然という、面白さ保証付きタイプの映画だった。どこまで原作に忠実なのかわからないけど、現実の話なのか小説の話なのかの種明かしをするタイミングとかも良かったと思う。じゃあ話が面白いだけなら映像である意味はないのかってことになると、確かに映像ならではの面白さが弱いのは不満。

出版社の編集者の土屋太鳳が、藤原竜也の小説が現実に起こったことだという裏をとるために、初めて富山に行き、小説で出てくるカフェや床屋を巡るシーンがあるが、たとえばこの「現実パート」と「小説パート」に、画角や照明や秒間のコマ数などの微妙な映像上の差異なんかがあれば、「フィクション」と思われたものが「現実」だったというような、視覚的に立体感がたちあがってくるような工夫があれば面白かったのになぁと思う。たとえば『ラストエンペラー』で、本編では絢爛たる歴史の佇まいにあった紫禁城が、ラスト一般人になった溥儀が観光客で訪れた際の、観光地然とした色を失ったような雰囲気の差なんかのような、歴史のうねりをその映像だけで語ってしまうような、そういう「映像ならではの面白さ」がないと、やっぱり映画って魅力的にはなりにくいと思う。かといって、「現実パート」と「回想パート」なんかでよくありがちな、モノトーン寄りの色調なんかの差異みたいにやりすぎると、この物語の入れ子構造の面白さが台無しになってしまうし、まあ結局同じような撮り方をするしかなかったのかも知れない。

カフェでバイトしながらバンドやっている地方でさえない生活を送っている女の子の感じが自然に醸し出ていた西野七瀬が良かった。美人だけど悪目立ちせずこういう脇役をこなせるとこの人は案外俳優の世界でうまくやっていくかも知れない。

(評価:★4)

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