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[コメント] Away(2019/ラトビア)

本当のクリエィティブっていうのは、どう見せるか、ではなく、何を見せるか、考えることなんだなぁ。
おーい粗茶

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







自分の日頃の仕事生活の影響か、「どうするべきか?」「どうやったらよいか?」という方法論で物事を考えることが多くなり、いつしかそれが自分のいろんなことの判断基準になっていたようだ。日本の優れたアニメ作品を見ていて感じることも、あらかじめどこかでわかっているイメージが実際に具現化されていてすごい、というを感じ方をしていることが多かった。つまり端的にいえば「その動かし方すごい」っていう方法への感動だ。

この作品を見て、鳥の動きがすごい、とか、バイクのスピード感がすごい、とか、思わなかった。鳥の動きやバイクのスピード感がすごくなかったのではなく、そんな方法論なんかが小さいことのように感じるくらい、自分はこの作家に何を見せられているのか、というこの作家が作り出した想像の世界への驚きが勝ったからだった。

自然の植物や生物の営み、星空や雲、風の音、すぐそこにいる死との同居、この空気の静かさ。そしてそこに生きる生き物同士の「生きたいよね」っていうプリミティブな共感。あらかじめわかっている自分の脳内のイメージストックのどこにもない世界を見せられた感じだった。鏡の湖の上をはばたく鳥の群れが湖に反射したそれと一体になった絵は美しいのだが、「絵が美しい」なんていう技術的な意味合いが含まれてしまうような言葉を発するのが違う気がするくらい、この世界は圧倒的だった。「どうするか」ばかり考えているうちに、「何をするか」を考えることがほとんどない人間に自分は気づいたらなっていたかも知れない。こういうのが本当のクリエィティブなんだ、実生活での物の考え方もこういう物を考え方をしなきゃいけないなぁと、頭をガツンと殴られた気がする。

いろいろな比喩や寓意が読み取れるけど、それが支配的でないのもいい。私が一つ感じたのは、主人公が死から逃れる途中、生きるために必要な道具を、次々と失っていくことだ。リュックを失い、バイクも失い、最後は徒手空拳で海へとダイブする。それでいいんだ、最後はそうするしかないんだ、という、そういうメッセージを感じた。なんだ、鳥に助けられて? それじゃただのファンタジーだぜ、と思わせて、対岸に人の影。ああ、この話、空想の世界ではなく、われわれの住んでいる世界のことなんだ、と最後に現実に引き戻す。ここだけは「うまい」と言ってしまいたい。

(評価:★5)

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このコメントを気に入った人達 (2 人)月魚[*] DSCH[*]

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