黒魔術。悪魔崇拝。キリスト教文化ならではのテーマを自分のものとして描ける文化が羨ましい（というほど羨ましくもないけど笑）。でもこの共通のモチーフがあれば、ここに落とし込めるので、枝葉の部分のディテールなどで存分に楽しめるんだろうな。反面そういう文化に属さない日本人なんかにすると、なんだ結局悪魔かよ、ってなっちゃうのかも。自分の母親からの継承でやがて悪魔に魅入られていくっていうストーリーよりも、そうは思わせつつ実はただ主人公の母親が娘の死をきっかけに人格が崩壊したっていうだけのドラマとしても見られる、というほうが日本人好みってことになりそう。

主人公をおいつめた一番の功労者って、実は旦那なような気がする。息子が誤って妹を事故死させてしまった時に、もっととるべき態度があるだろうに。あんな隠々滅々な雰囲気を醸成しちゃいかんよ。

この作品で一番感心したのは、事故で死んでしまう妹のキャラクター造型。不気味で少しおかしなところがある子なのかなと思わせて、実はいたってふつうの子で、母親に仕事の邪魔だからといって無理矢理息子の学校の仲間とのパーティに追っ払われ、大人しく従って、つまらなそうに兄にくっついていくところがなんともいじましい。あげくにナッツ入りのケーキでアレルギー発作を起こしてそのことで無残に死んでしまう。観客が妹に当初抱いていた「不気味な子」という印象がゆえに、そのことに対する贖罪の気持ちが強くなる。妹が誰からも好かれるタイプの子では味わえない感情だろう。作劇の妙。