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[コメント] スター・ウォーズ 最後のジェダイ(2017/米)

ブレる世界観。ニュージェネレーションのスターウォーズはどこに向かう?
おーい粗茶

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







話はいきなり逸れるが、911のテロを見た時、コミック『沈黙の艦隊』で提唱されたような、国家から独立された武力が世界の戦争を抑止するということが、まったく通用しない世界になったことを痛感した。海江田たちはあの航空機テロをどうやったって阻止できないよなぁ、と。あの物語って、よくも悪くも「国家」という枠組みが強固だから成り立つわけで、グローバリゼーションや宗教といった、国家を軽くうわまわってしまうような社会の仕組みができあがってしまうと、ほとんど無力だったのだった。

戦いの面白さを描くのが目的の宇宙を舞台にした物語で「戦い」が起こる設定をどう作るのか。60年代から70年代に、ルーカス世代の子供たちが知っている叙事詩の世界観てのは、帝国と被植民国との対立の物語でしかなかったのだろう。世界の対立とはおおむねそういうものだったから、エピソード4〜6が作られた頃、ふつうに「今」の視点で、ルークやソロに共感しながら物語を楽しめたし、エピソード1〜3は前日譚だから、古典や神話の感覚で「昔」を見ていれば済んだ。

エピソード7からは、ルーカス少年が構想していた時から、ルークやソロたちの子供たちの世代の話になる、ということは決まっていた。と同時に、ふたたび物語の視点は「今」に戻されることを余儀なくされる。そこで歪が生まれた。制作陣に迷いが生じたのだろう。ルーカス少年が夢想していた「ルークやソロの子供たちの世代の物語」はまだ帝国主義が続いているのだ。ところが「今」の世代にはそれがピンとこない。劇中レイアが「反乱軍を立て直す」と言うのだが、思わず立て直さなきゃならないのは「帝国」のほうだろ!、と思ってしまった。敵が強大じゃないじゃん!!

それを決定づけたのがあのカジノの星。あそこにつどう武器で潤う富裕層たちと、彼らに支配される貧困層との対立の図式が持ち込まれた。あの富裕層たちのほうが、帝国のふたりの兄ちゃんたちより権力がありそうなんだもん。あの描き方は地雷を踏んだと思う。劇の締めくくりが、貧困層の子供たちの蜂起を予感させるのだが、あの子供たちの敵は帝国じゃなくグローバリゼーションなんじゃないの?? 

で、このシリーズってそんな社会の在り様を描くことが目的では断じてない。対立なんていうのは戦いを描くためのお膳立てにしか過ぎない。帝国は何が嬉しくて世界を支配しようとしているのかなんて考えちゃだめ、とにかくやつらは武力で攻めてくるやつらであって、だからこそドンパチする、これでなきゃいけないのに…。レイやレンやフィンたちは最終作で何と戦うというのだろう?? まさか、かのアジアの巨大国家に次の「帝国」を仮託するわけにはいかないでしょう。ハリウッドのマーケット的に。ってもう大人の事情ばっかで子供の夢でもなんでもないよな。制作陣も実はまだ考えていないって気がする。さてさて私はデイジー・リドリーが好きなので、ちゃんとレイの物語としてこのシリーズをしめくくって欲しいのだが。それには「帝国の逆襲」に期待したい。

(評価:★4)

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このコメントを気に入った人達 (13 人)まー 死ぬまでシネマ[*] Orpheus 考古黒Gr 緑雨[*] Pino☆ pori[*] シーチキン[*] Miyapon02 カルヤ[*] 月魚[*] DSCH[*] けにろん[*]

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