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[コメント] アウトレイジ 最終章(2017/日)

このドラマならもっと大友の内面に焦点をあてて欲しかった。
おーい粗茶

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

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監督は本作の大友は狂言回しって言ってたけど、出番的にはそうなのかも知れないが、むしろ前2作よりも大友の映画だったように思う。ふだんの北野映画での主演ビートたけし演じるキャラクターは、多少の性格や属性の違いはあっても、アウトサイダーでありシニカルだけど優しさもありユーモアと繊細さと凶暴と狂気があるビートたけし本人そのもの、と思って見てもらえばだいたい間違いのないような造型でよかったと思う。

1の残虐を遊戯のように楽しむところも、2の「もうやんなっちゃったよ」も、当時のたけちゃんの一面にシンクロしてて、大友でもたけしでもどっちがどっちでもいいような感じだった。むしろそういった意味ではヤクザ映画の狂言回しだったように思うのだが、今回2で無情の国から帰ってきた大友が、若い衆の仇を討つといいながら身内の若い衆を巻き込んで死に追いやり(挙句に敵の若いヤクザを撃って「若い衆殺しちまった」と嘆いたり)、肝心の会長のためといいながら「これ以上会長に迷惑をかけないでください」と言われそれに対し、わかってますから、というような、一概にただの暴走やヤクザのけじめだけにはない悟りや、とりわけ大森南朋や白竜演じるキャラとの心の通わせ方に味わい深いものがあって、これがいつもの「なんとなくビートたけし」的だけではもったいない、もっとこの大友というキャラを堀り下げて欲しかったな、という感じだった。

これ例えば、大友を武以外の人が演じたほうが、役者なりの解釈や役作りが加わって面白くなったかもとか思った(ものすごくつまらなくなる可能性のほうが高そうだけど)。脚本を書き、監督として作品全体を管理することと、俳優として役になりきることのベクトルの相違というものを今回は感じてしまった。

監督が続編を作りたかったことの大きな理由のひとつは、善人塩見三省を見事に強面キャラに仕立て、してやったり感があったからだろうと思うのだが、塩見さんは実生活での病み上がりで前作とは風貌もうって変わってしまっていた。たがそれを逆手にとって今回は何とも不気味な凄みのある好演で今回の役柄にはむしろあっていた(監督が設定を変えたのかも知れないけど)。最初に西田と塩見がつるんでたことがわかる山王会の事務所に、死んだはずの西田が登場するシーンでの塩見の「にかっ」と笑う表情。あれ本作の最高。

(評価:★4)

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