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[コメント] 心が叫びたがってるんだ。(2015/日)

主人公たちの不器用さには親しみが持てる。
おーい粗茶

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







言葉を失った少女の心の殻を破ったものって、絶対に失踪した彼女を待っていたクラスメートたちの「優しさ」であるべきだと思う。じゃなきゃ「決定打」って他になにがある? この物語って構造上「どうやって彼女は声を取り戻すのか」がテーマのはずだから、観るほうはそこをこそきちんと知りたいという期待が生じる。

順を探しにきた坂上くんとのやり取りから、彼女は声を取り戻すのだが、それが嫉妬から生じた「思いのたけ」だったというのなら、彼女をしゃべれなくしていた抑圧の原因はそれだったのか? 違うだろう。例えば、嫉妬の言葉は、それはそれで声に出せなかった本心なのだ、というのなら、順がしゃべれなかった「もともとの理由」が、いつからか「好きな男の子の本心を知りたいけど口に出して聞けない」に変容していたのであり、順はいつのまにかごくふつうに「思いを口に出せない子」にまで成長していたのだ、とか、何か事情をきちんと整理して描写して欲しかった。彼女は生来のおしゃべりで、実際たぶん、ポンポン思ったことを口に出しては、まわりの人を傷つけてきただろう。その癖がミュージカルの練習の過程で、本人の心の回復とともにだんだんと出てきてしまい、ある時「私はまた調子にのってしまった」と鬱になる、とかのくだりはとても共感できるだけに、ミュージカルの練習が始まってから当日の失踪までの彼女の心の描写をもう一ふんばりして欲しかった。

尺の長さから難しいとは思うが、おしゃべり=他人の気持ちを慮れない、ということで、浮かれたり、落ち込んだりする不器用な彼女がもっと描けていればよかったのになぁと残念。

(評価:★3)

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このコメントを気に入った人達 (1 人)水那岐[*]

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