[コメント] 座頭市 THE LAST(2010/日)
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柳司が背負いながらに問う「市っつあん、一体何があったんだい?」や、勘三郎演じる顔みしりの博徒が「また会いやしょう、賭場でないところで」という場面で浮かびあがるべき、市という人のたぶんに人を惹きつける魅力的な人物であるという表現が成立していないと思う。
これ原作どおりということなのかも知れないが、本作で描かれている部分以前の市の説明がロクにされてなく、進行中の本編でもまだ市という男がどういう男なのか定まってこないうちに、反町や勘三郎といった役者が演じている上位キャラクターであることが疑いない人物から「一目置かれている」という状況をいきなり提示されることは、それは香取慎吾にシナリオによる説明なしで「もうとにかくたたずまいからして一角の人物だっていう感じでお願いしま〜す」と頼むようなもので、それはちょっと難しかったように思う。
香取くんの演技力の限界もあるかもだけど、やっぱ「勝新太郎の市」像に対し、イメージをあまり壊さないようになのか、同化しないようになのか、いずれにしても引きずられているところが大きいように思う。市と原田芳雄の医者との本作のあそこだけコミカルになるやりとりなどとてもチグハグな感じがするのだが、あれが勝新だったらあの場面妙にしっくりするだろうなあ、と思うのがその根拠だ。
香取・市のキャラクターをしっかり定めないので、その隙間を何となくそれまでの座頭市を参考に埋めていくような曖昧な作業が終始続いていってしまったようだった。倍賞千恵子が最後に市にかける情のようなものも、テキスト的に理解はできるけど、本当はもっと盛り上がったはずでしょう。
理由はよくわからないのだが、阪本監督にしても、本来ならあの悪党どもをもっともっと厭らしく描けるように思うのだが、なんかいまいち紋きりにとどまっているように思った。監督は現代人の自然なしぐさや、猥雑な風景をたくみに使い、観客にジリジリするようなストレスを感じさせる酷いヤツや状況を描いていたってことだろうか。
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