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[コメント] ターミネーター4(2009/米)

シリーズ1〜3の冒頭を飾った、あの伝説の「機械vs人間戦争」の本編がいよいよ作品化! シリーズ通してみて思う「スカイネット」のチョイダメぶりにちょっと親近感。
おーい粗茶

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

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アクションシーンはかなり良いし(特にバイクやヘリを使ったシーンは見ごたえあり)、SF的な絵という点でも、仕掛けた罠で誘い出したハンターキラーが夕闇を哨戒飛行しているのをジョンたちが遠目で観察しているところや、スカイネット本部プラントの描写など、ところどころ萌えな描写もあるのだが、いかんせん話がつまらない。

「戦争もの」の面白さは、機知に富んだ作戦・戦略性の面白さであり、作戦遂行にまつわるスリルとサスペンスであり、そこに地形的なエッセンスや人間の感情のドラマなどをどう盛り込んでいくかである。血沸き肉躍る戦争、人に話したくなる戦いとは、その戦いのストーリーの面白さであって、ドンパチの物量の多寡ではない。野球マンガにおける「試合」の見せ方と同じである。

トロイの木馬的な「潜入型ターミネーター作戦」と「シグナル作戦」が並行に描かれていて、前者が失敗に終わることが、本作のテーマにもなり、また「戦争物語」としてもキーになるはずなのに、簡単に扱い過ぎて盛り上がってこない。2つの作戦のどっちかが失敗すると、それがもう一方を成功させる布石になりうるのだくらいの戦略性が欲しい。シナリオ的には、ジョンたちがマーカスの正体を気にするあまり、シグナルトラップに気付かなかった、ってことなのかも知れないけど、なんかそういうふうには描けていない。相手との読みあい騙しあいがあって、機略やカンで回避した、と思ったら本部を撃破されたとか、そういうのが面白いんだけどな。

また、マーカスの扱いだが、マーカス本人はアイデンティティを疑わず、「こいつはジョンやカイルを裏切るのではないか」と観客をハラハラさせるわけでもなく、いつまでもジョンたちから信用されないという葛藤があるわけでもなく、いまさら「機械のアイデンティティ」ってのもないだろう、っていうのはわかるけど、それじゃ何を描きたかったのだろう? 陳腐だけど、最後、マーカスの心臓を移植しようとしたらその心臓が人工心臓で、マーカスは100パーセント機械だった、それなのになぜ自分が人間だと思おうとしたのか?くらいのヒネリは欲しかったかな(もっとも心臓が人間性の拠り所っていうのがそもそもアレだけど…)。てか、今後シリーズとして「機械vs人間戦争」を描く上で、その辺をテーマにしないで何を描いていくつもりなのだろう? VFXのドンパチだけで持たせていくの?

もっともスカイネットっていうのが、シリーズを通して見るとあまり知性的な感じがしないっていうのが面白い。タイムパラドックスの影響とかもきちんとシミュレーションしないで、ジョンのかあちゃんを襲って失敗したら、もう1回もっと前の時代のかあちゃんを襲いにいけばいいのにジョンの方を襲ってみたりと場当たり的だし、今回だって、「人間に信用されやすいように人間により近いターミネーターを作ったのだ」っていうその発想がアバウトだよな。で案の定裏切られてるし。…でも、それで失敗してゴリゴリの命令絶対服従型に路線を改めるわけだ。それでT2では、人間の命令に絶対服従するよう人間にプログラムを書き換えられ、それで自分らがやられちゃうんだもんなあ…。そんな調子だから「機械vs人間戦争」は何十年も続くのだな。良く出来てる話じゃないか。

(評価:★3)

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