コメンテータ
ランキング
HELP

[コメント] 少年メリケンサック(2008/日)

あおいちゃんオーバードライブ!
おーい粗茶

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







クドカンの脚本を得て、宮崎あおいが水を得た魚のようなぶちきれ演技をのっけからかましてくれる。もうそっから画面に釘づけ。クドカンが宮崎あおいのオーバーアクトの魅力を存分に引き出してくれている。少年メリケンサックの動画を見つけ、社長に報告するところ。あおいちゃんとユースケとのやり取りのオーバーアクトとテンポの良さ。二人の冒頭の掛け合いは、本作の良さのすべてを凝縮しているようでむやみと素晴らしい。

陰のある繊細な心の少女、屈託のない笑顔をふりまく童顔の女の子、宮崎あおいをヒロインに映画を撮ろうとする人なら、誰だって彼女を魅力的に撮ろうとしているはずだ。みな「宮崎あおいを一番かわいく見せるコンテスト」に、自覚的あるいは無意識的に参加してしまうのだ。「どうだい俺のあおいは最高だろう」って。

眉間に皺を寄せての困惑顔、しかめっつら、意味ありげな笑み…クドカンは、宮崎あおいが時折やる「わざとらしい演技」の魅力を見抜いたのだ。まるでマンガのキャラの記号のような、くさい芝居のいかにもなそれら。美少女顔でナチュラルな芝居が持ち味のくせに、そういう演技をしようとする宮崎あおいさんという人の茶目がたまらなくおかしくかわいいというふうに監督自身が感じ、あ、それだったらそれをそのまま見せちゃおう、ということだったんではないだろうか? 

ウェーっと思い切り泣いたり、「揺れませんが、何か?」と激しくガンを飛ばしたり、バカップルのじゃれあいでしなを作ったり、端正な顔立ちの彼女ならではの、やればやるほどの面白さとかわいさがあるのだが、韓国や香港映画ならすんなりいけても、今の日本の映画が持っている平均的な空気感がそれを許さないという中で、宮崎あおいのオーバーアクトを最大限に発揮させる方法としてパンクという題材を選んだんだとしたら、それは凄い慧眼だと思う(無論、監督自身のバンドに対する「好き」っていうのが先にあって、そこにうまく組み入れたのだろうが)。中年のパンクバンドがめちゃくちゃをやるっていう設定だからこそ、おおげさが何にせよ馴染むのだ。

ウンコまみれになったり、おっぱいを触られたり、小さいのをネタにされたり(本当がそうかどうかは知りませんが)、チンコでかいのかチンコでかいのかと連呼されたり、相当監督に酷使されながら余裕で受けていたあたり、この人は受け皿が大きいなあ。ともあれ、これほどさまざまなあおいちゃんの、喜怒哀楽のどれもこれもがかわいすぎる表情が思い返される作品というのは得がたいものがある。もう、宮崎あおいを魅力的に描いたものとしては、これが最高傑作!…と何度も書こうとしてはためらってますが(笑)。

中盤あおいちゃんのことを少し忘れるくらいに描かれる脇役たちのドラマもよい。バンドのメンバー一人一人の、そしてアキオハルオ兄弟の仲の、勝地涼演じるカレの、レコード会社社長の音楽への情熱の、それぞれの再生の物語もかきつつも、でも最後は「何だかなあ」と笑われる道を選ぶというスタンスも監督らしくていいなと思う。

(評価:★5)

投票

このコメントを気に入った人達 (7 人)りかちゅ[*] kazya-f[*] ユキポン ペペロンチーノ[*] chokobo[*] シーチキン[*] chilidog[*]

コメンテータ(コメントを公開している登録ユーザ)は他の人のコメントに投票ができます。なお、自分のものには投票できません。