一部チンコや乳首に噛み付いたりする以外の蛇の描写は案外まともだったりする。きちんと毒蛇研究の専門家が対処できる範囲というか、バイオなんちゃらでモンスターになったとかいうヘビが出てくるわけではない。ヘビの種類ごとに正しい血清を用意しなきゃいかんと機内からヘビの写メ送らせたりするあたり、ちょっとＢ級っぽくない香りが漂う。

航空パニック物の常套よろしく、搭乗してくる乗客のひとくせふたくせを順順に紹介し、ああこの人たちの中で、誰がどういうふうに死んで助かってとか、誰が憎まれて誰がヒステリー起こしてっていうドラマになってくいくのね、と思わせておいて、いざヘビがぶちまけられるとキャラ関係なしに大騒ぎ（まさにパニック）しているところが面白い。（押し倒されてその上を逃げるオバサンにヒールで踏みつけられ、ヒールがパンプスから抜けたのがこめかみに突き刺さって悶絶している男の描写がやけに丹念。監督のヒールに対する私的な憤りがこめられていると見た。）

で、どこから出てくるかわからないうちは怖くてしょうがなかったのが、いざ安全地帯で隔離できちゃうと相手が毒ヘビとはいえ、絶望するには程遠いというのが、人間のほうに安心感と同時にイライラ感を与えるのが面白い。

高度が下がって墜落の危機がせまってきているときなど、もうヘビなんか眼中にないサミュエル・ジャクソンと観客は、高度を立て直して帰ってくると、相変わらず向こうにうじゃついているヘビに対して、もはや怖いというよりウザい。そこになよっとした男のＣＡが「空調がとまってて機内の空気が循環していない」という重要な事実に気づき、指摘している時の、「てめえこれ以上何か問題があるとかっていう話してるんじゃねえだろうな」といわんばかりのサミュエル・ジャクソンの厭顔が最高におかしい。

そしてイライラ感が醸成され、「もうガマンできねえ、全部ぶっとばしてやる！」ってサミュエル・ジャクソンがブチ切れる。もう、それがこの作品のテーマ。もう、ウジャウジャうるせんだよ！スカっと一気に解決してやるぜ！っていうのがこの作品のテーマなんだろうな。いろいろ大人にもならなきゃいけなくなったアメリカがいろんなしがらみに束縛され、無邪気にわがアメリカと言いづらくなったりした昨今の複雑な情勢へのウサ晴らし。マザーファッキン！で即解決！と言えたらいいだろうな、という作品なんだろう。

「おい機が水平じゃないぞ！」「機が水平じゃないっていうんだろ？」っていう（わざと面白いから傾けているっていう）ゲームオタクにまたもコメカミが震えるジャクソンと、オヤジを途中まで飲み込んだまま機外に放り出される大蛇の一瞬の描写に＋１点。