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[コメント] パッション(2004/米)

その人を打ち据えたありとあらゆる種類の罪を、あまさず描写しようとするその執念が凄い。
おーい粗茶

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







冒涜、陵辱、嗜虐、下劣、無知、不寛容、偽善、頑迷、不遜、排他、保身、嫉妬、畏怖・…あと、提督の責任放棄とかもあるか。刑罰を受けるキリストの描写を軸として、監督は人間の悪や悪意のさまざまなタイプを紹介していく。「われわれは何をしたのか」を徹底的に描くことが、最も映画的な断罪というふうに考えたのだろう。

先のような罪を犯さずイエスを見守る者でさえ、凄惨な肉体の破壊を見届ける強さを持ち合わせず、思わず目をそらし、さらに度を越したそれらの目撃の末に、そのうち「目の前で何が起こっているのかよくわからない」という、感覚が麻痺してしまう状態のその表情までリアルに描く。ここまでくると、もはや生物の自己防衛本能すら容赦しないの、監督?って感じだが、その信念に微塵の揺らぎも感じないところと、その描写の緻密さには感心した。

マリアとイエスの、大工時代や幼年時代の回想と、刑場に赴こうとするイエスを抱き起こそうとするシーンの、「純粋な親の慈愛」と「すべてが新しく変わるのです」という2人のあまりにも隔たってしまった立場の感じさせ方なんかもうまい。

(評価:★4)

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このコメントを気に入った人達 (3 人)週一本[*] 水那岐[*] けにろん[*]

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