[コメント] 悪の教典(2012/日)
映画を見終った人むけのレビューです。
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蓮見にとって、殺人は良心の呵責を感じることではない。しかも、生徒の信頼を得ている蓮見の殺人は、たとえば戦争やヤクザの抗争のように、自分がやられるかもしれない恐れもない。したがって、問題になるのは、如何に警察の目をごまかすかということだけだ。だから殺人には何のスリルもない。
殺される生徒たちにとっても、多くの生徒にとっては蓮見自体は恐怖の対象ではないのだから、蓮見がいくら近づこうともスリルはない。蓮見の異常性に気づいた数人の殺され方もむしろ唐突で、スリルはない。見るほうも見る前から殺されることを知っている。
だから、この映画にはまったくサスペンス的な、宙吊りにされる要素は存在していないし、制作者もそれを意図していない。
結果、制作者の関心は、この蓮見というモンスターの、モンスター性の演出に向かう。蓮見の過去がテーマになるのはある意味必然的だった。
しかし、その説明は、この男はモンスターだ、モンスターだ、と結局繰り返しているだけに思われる。作品にしまりがなくなった理由はまさにそこだと思う。
もちろん、例えば蓮見の説明を減らし、二階堂ふみ演じる片桐の心情をクローズアップする手もあったかも。 ただ、それをしなかった制作者の意図もわからなくはない。
最初見たときは、いまひとつだと思ったが、「殺人シーンを楽しもう」って気分で見直すと、結構楽しめた。 まさにこれは、殺人シーンを楽しむ作品、なのだと思う。
まあ当然、本当の殺人、ではないから楽しめるのだけどね。ある意味、マルキ・ド・サドを読む楽しみに近い、といえば誉めすぎか。。あれもスリルは微塵もなかった。
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