[コメント] 二十四時間の情事(1959/仏)
これは現実的映画なのだ。
「ヒロシマ、わが愛」というのが原題。この映画は原題の方が断然いい。レネのテーマは一貫している。記憶。これは実に映画的なテーマだ。
1959年。あれから14年後の映画。まだまだ戦争の記憶が生々しく残っていた時代。いいや少なくともそういう実感があった時代。わたしたちの感覚で戦争を捉えては絶対にいけない。
広島という都市、ヌベールというフランスの村、一人の日本人の男性、一人のフランス人女性。それぞれの中でそれぞれの土地の記憶が潜在的に残っている。そして街の中に、あの痕跡が至るところで見いだせる。
映画では、そういった記憶が交錯していく。戦争の記憶を脳裏に刻んだまま、広島というあの記憶を刻んだ街を放浪していく女性。もちろん記憶は、想起という形をとるしかない。広島という街が、彼女に記憶を想起させていく。
最初にながながと映される広島の惨劇。これは、でも本当の広島ではない。どれほどそれが残酷であろうとも、それは本当の広島ではない。われわれは広島を永遠に理解することができない。
彼女が想起したことが彼女であり、ヌベールである。われわれは彼女の記憶からヌベールが何であるか考えることができる。そして同様にこの日本人の男がヒロシマなのである。
あまり観念的に捉えないようにしよう。これは現実的映画なのだ。
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