[コメント] マタンゴ(1963/日)
映画を見終った人むけのレビューです。
これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。
マタンゴ食べた人が未経験者に食べさせたくなっちゃうように、『マタンゴ』見ると未体験者に見せたくなっちゃうぞ。スゲー!恐るべしマタンゴの伝染力!まさにマジック・マッシュルームに代わる「合法ドラッグ」!?
でも、友達なくすか、褒められるか、大きな賭けなんで、やめとくべきか…。とりあえずシメジは食えんようになりそうだし。
オイラはあのマタンゴの巣窟の「キノコの笑い声」が一番耳に残ったッス。
書きたかったこと、ほとんど、からすの王女様に書かれちゃった(笑)ので、それ以外のことをチラホラと。
以下、雑感。
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■マタンゴという<名前>
「マタンゴ」は新種のキノコだから、あの難破船の乗組員のうちの誰かが名付けたんですよねえ。ストレートに考えると発見者の名前をそのまま付けたりするけど、"matango"って名前聞いたことないし、でも語感から言うとラテン系なんでしょうか?それとも"matango"って語彙のある言語があるんでしょうか?
何にせよ、一度聞いたら忘れられない、なぜか繰り返し言いたくなってしまう、誰かが言えばなんか笑っちゃう、まるでビートたけしの「コマネチ!」に相当する、ヤミツキになる<名前>であることは確かですね。
だって、このビデオ探している時、友人に聞きまくったんですが、映画好きじゃない人も「名前聞いたことある!」と反応を示しましたから。
■"The Attack of Mushroom People"と"Fungus of Terror"
アメリカでのタイトルは"The Attack of Mushroom People(キノコ人間の襲来)"か、"Fungus of Terror(恐怖のキノコ、菌)"だそうですねえ。
ちょっと笑える。
ところで、"fungus"(菌)というとまず伝染性についてイメージするんですが、この映画においても「エゴ」や「狂気性」、いわゆる「心のトリガー」が外れる「菌」ってのが、一番伝染力があるようですね。それが、マタンゴより怖いんですねえ。
■ホラー映画という<意匠>
僕もこの映画の素晴らしいところは、キノコ云々よりも、極限状態におかれた人間の描写にあると思いました。
だって、オープニングから、生存者は一人だとネタバレしちゃっているわけですし、始まって30分くらいで「キノコは食べないようにしよう」と宣言しちゃうわけですから、どのような「過程」で、人間がそのマタンゴを口にし、一人だけ生き残るのか、それを描き切る余程の自信がないとできないですもんね。
最初の方は、それこそ『蝿の王』を思い出していたんですが、大人の方が、イノセンスという<処女膜>を喪失してしまっている点で、動物的本能や欲望に、ここでは「理性」という歪なフィルターがかかって、「美しき残酷性」ではなく、何か言葉では言い尽くせない「醜悪なモノ」が表出するのでしょうか。
やっぱり遭難するなら一人の方がいいのかなあ…とトム・ハンクスを思い出す僕。バレーボールとなら仲良くやってけそうだもんなあ。でも、スティーヴン・キングの短編のひとつ(タイトルは失念)で、一人遭難してしまった飢えた主人公が、違う「モノ」を食って壊れていく話を、昔読んで、かなり怖かったもんなあ。ああ、悩ましい。
■<日本人>だから?
欧米なら、こういう極限状態に置かれた人間を描く場合、必ずと言っていいほど、宗教が絡んできますよね(例:『生きてこそ』とか)?少なくとも、登場人物の一人や二人、宗教に救いを求める、はしぼそがらすさんの言葉を借りれば「しがみつく」(注:「すがりつく」でしたね)と思います。
その点で、この映画が製作された60年代という、物質的豊かさ追求のために、宗教観や倫理観が無機質化、その精神性を骨抜きにして形骸化させていった、無宗教・中流・プチブルな<現代日本人>の特徴が如実に表れていると、個人的に感じました。
■ラストの解釈
ラストのセンセーの顔は、「結局はキノコを食べた」ということなのでしょうか?
あのラストのセリフには「最後まで食べなかったんだ」とありますが、その「最後」は「島を出るまで」に限定された「最後」なんでしょうか?ヨットの上で食べたのなら、センセーはマタンゴを持ち帰ったのでしょうか?うーん…
僕は、マタンゴがキノコ雲をイメージして作られたという点で、船か島の残留放射能で被爆したケロイドだと思ってました。時折登場する食べちゃった人のキノコ化は、どうやら手から始まるようですし。天本氏演じるボス(?)マタンゴが、微妙に溶けてケロイド化しているのにも放射能が関係あるのかな、と。
「核の発明」「原爆投下」という事件が、明らかに人間の命や価値観に関するパースペクティヴを変化させ、学術娯楽問わず多方面において影響を与え、それを意識しはじめた60年代であるという点においても、その発想もあながち誤解と言えないのでは?
でも、センセーもマタンゴを食べたとしたら、依存性があるようだから、「ヤクギレ」でマタンゴ食いたくて仕方ない意味での「あの島にいれば良かった…」だったりして(笑)。
■「それを言っちゃあ〜おしめえよお〜」
つーか、精神病患者に、あんなけばけばしいネオンは見せんだろ。
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ドラッグ・ディーラー、荒馬大介様、からすの王女様、「オイラにおすすめ」ありがとうございました。
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