欧米映画にありがちな神と悪魔の対立構図を持ち込まず、きちんと善意と悪意の対決として描くところに好感が持てる。そのため、最終的には主人公ハリー･ポッターが神秘的な魔法の力を借りて悪を打ち負かすにしても、自分に向けられた黒い悪意にひるまず立ち向かうという姿勢を示した（／示し続けた）点において、充分ヒーロー足り得ていた。初めのうちは人間界には居場所がないからと魔法学校（ポグワーツ）へ戻りたがっていたハリーが、自ら進んで選び取る強い意思を示すまでになったのも、いかにも「成長のあとが見られた」という感覚を呼び起こすうまい演出だったと思う。

また、彼を単純に物語の中のヒーローとして描く方が簡単であったろうことを思えば、あからさまなチヤホヤ扱いがかえって彼を妬み嫉み彼に悪意を持つ者たちの存在に説得力を与えていて、フィクションとして善悪のバランス感覚に優れているのと同時に、次作･次次作以降の展開のネタ元ともなりうる二重三重に巧妙な演出であるといえる。

いま（原作読んでない読む気もない）私が勝手に危惧しているのは、4作目辺りでドラコと闘い彼を倒したあと、5作目で結局ロンと対決するはめになるのではないかと･･･、いやそうならないことを祈る。

すべての謎が解決されてはいない（少なくとも空耳の件は）ところをみると、あまり厳密な脚本ではないのかな、という危惧もある。だがこの構成力なら次作も大いに期待できそう。シリーズ物の要は２作目だと（勝手に）信じているので、このシリーズはたぶん成功すると思う（ま、俺が言わなくてもね）。ってか前作ちゃんと見直してみます。

80／100（03/05/11見）