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[コメント] 風の谷のナウシカ(1984/日)

多様性の確保。この映画からメッセージを汲み取るとすれば、知性ある人間こそ、主体的にここへ踏み込んでいくべきだ、ということになるが・・・
G31

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







 土が悪いってのがエッセンスみたいで、腐海の植物は土の毒素を体内で浄化し、瘴気を地上に吐き出す一方で清浄な空気と土を地下に溜め込むと。風の谷は海から吹く風様に守られ、腐海性植物の胞子がやって来ないから、人間が生きていける代わりに土も浄化されないと。ただ、作物は普通に収穫でき、人間が生きて行くにはなんの問題もないと。だとすると、なぜ土の浄化ってことが問題となるのかいまいち分かりにくい。

 つまり、土の浄化によって誰が得するのか、ってことなんだが。人間は、腐海性胞子さえ一掃できれば、土が悪いままでも生きていける。腐海性植物は、土の悪いところでも生きていけるが、自分で浄化したきれいな土の上でも生きていける。浄化された土の上では、腐海植物と人間は共棲できるのだが、腐海植物にとって人間が生きようと死のうと知ったこっちゃないだろう。

 人間にとっても、ただ生存しさえすればいいのであれば、腐海植物との共棲を選択する必然性はない。だが人間には、多様性こそ活力の源であると認識できる知性と、美を愛でる感性があるのだ・・・。

 美を愛でる感性の存在を指摘した映画が、実際に美しい作品であって単純に嬉しい。また、活劇として見ると終わり方に他力本願的な甘さがあるのは否めないものの、垣間見せるテーマ性の深さに分け入りたい魅力を感じる。奥深く分け入ったところで、何も見えてこないにしても。

80/100(04/05/09記)

追記)15年前に初めて観たとき(一応、劇場で観た。今回はビデオで観直した)の評価は★2つなのだが、なんでそんなに評価が低かったのか、もう忘れた。

追記2)漫画の方が後から完結したのなら、映画の方が”原作”なのではないか?という気がするが、まあいいか。そんなに面白いのなら、「次に読むリスト」の一番お尻に載せておこう。いつ読むか分からんけど。

追記3)しかし漫画版では地球が人間の存在を否定することになるんですか?これはくだらないなあ。私が映画から汲み取ったものと正反対ですね。どう考えたってこれは人間の過剰な思い込み。地球にとって人間の存在なんてあってもなくてもいいものだ。

”あいつ、絶対俺のこと嫌ってるよ、だって会うたび無視するもの”

これって単に”箸棒”なだけだと思うんスけどね・・・。

追記4)ミラミラさんのおっしゃるナウシカのキャラクターが持つ無謬性への批判、分かる気はするけど(わかってないのかも)、単に物語を語る為に造形されたキャラクターってだけじゃないのかな。猿回しが猿を回すのは、猿を回す為である。この点にあまり深入りしても、堂々巡りになるだけだと思う。

 ラストでオウムの前に身を投じた点については、命を賭して戦うことの尊さを理解していたからだ、と私は普通に受け止めたんだけど、いかがなものでしょう。

追記5)ペンクロフさん(のレビュウ)は本当に面白い。「腐海」という言葉のもたらすイメージの豊潤さ。これを産み出しただけでも確かに宮崎氏は凄い。私は、アニメってのは基本的に子供が観るもんだと思うけど、今の邦画に日本語の豊潤なイメージを騒き立てる力は期待できないから、やはりアニメを見るしかないかな。こればっかりは外国映画に期待するわけにいかないし。

(評価:★4)

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このコメントを気に入った人達 (2 人)けにろん[*] Myurakz[*]

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