サッカーでは勝つようになったのに、映画で負けてしまうとは。リカードの比較生産費説によれば、今後日本ではもっぱらサッカーを開催し、韓国では映画を作るようになるだろう、などとたわけたことを言ってみたくもなる。

この映画のアクションシーンを受け付けない人がいるようで、ハリウッドの模倣だという非難がよくあるが、ちょっと信じられん。もともとハリウッドのアクション映画を嫌いな人々なのだろう。だって特に銃撃シーンなど、部分的にはハリウッドでさえ見られないような迫力を備えているし、シークエンスはオリジナリティに溢れているし、なによりこの映画を盛り上げるための必然的な要素となっているもの。細部になるが、主人公はじめ俳優たちの銃を構えたときの格好も、実に様になっている。それ以外でこの映画を楽しめない理由としては、人種偏見以外思いつかないな。

確かにビルの爆破シーンは、ハリウッドと比べるとちょっと見劣りする感はあるが、でも充分観られます。とっくに日本映画じゃ作り得ないとあきらめていたものが、突然隣りの国から出てくるとは、ほんとに驚きだ。サッカーより先に世界レベルに届いたね(褒め過ぎか？）。

もちろん、この映画のストーリー、プロット、見せ方、音楽なども優れていることは、他の人のコメントやレビューで言い尽くされているとおり（特にハイタカさんのレビュー、本人は筆舌尽くし難いと書いてますが、一番雄弁に語っています）。最も感嘆するのは、民族分断という重いテーマをエンターテイメントで描き、そしてそれに成功していることだ。あと我々日本人に出来るのは、この映画を観て楽しむってことだけだろう。

この映画を楽しめない人は、韓民族に対して人種偏見を持っているからだ、とまで言うつもりはありませんが(充分言ってるか？　冗談さ）、偏見や先入観を捨て、ぜひ映画館へ観に行っていただきたい、と言っておこう。ちなみに女性工作員の正体がすぐバレると文句つけてる人がいますが、これは観客に隠してないから当然なので、一種の手法ですよ。

90点／100点(2000／11／19記）

P.S.　ジョンイルに主演女優や監督が拉致されないよう、くれぐれも韓国政府は気をつけてやっておくれよ、老婆心ながら。