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[コメント] 白昼の死角(1979/日)

真の犯罪者にはなれなかった、悪党なる魂を持った者どもへの、鎮魂歌。
G31

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
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 描きたいものを描くにも技術がいるってことだな。いくら美しい風景に感動しても、ド素人じゃそれを絵にして人に伝えることはできん。技術に自信がないから、余計なオチャラケを入れる。不誠実だよ。下手は下手でもいいから、真剣にやってほしい。経済犯罪を描くなら、緊張感一本でやってほしいところだ。

 ・・・というのが初めの会社偽装の犯罪あたりまで見た感想。旅芸人に芝居をつけるシーンなんてまったくの不要だ。だがこの後は経済犯罪の痛快さを忠実に描き、それにまつわる間抜けな人間ドラマをなかなか見事に打ち出していると言える。オチャラケもむしろ経済をまともに取り上げることに対する衒いだろう。小説の世界でこんな衒いは目にしたことないから、映画人ってウブだよな。

 ただ、鶴岡七郎(夏八木勲)は一人で何でもやり過ぎかな。実在のモデルがいたのか、それとも複数の犯罪事件を一人にまとめているのか知らないが(後者じゃないかな)、どんな人間も時代の想像力という制約を乗り越えることはできない。いや、あまりに突飛すぎると誰にも理解できないから、特に犯罪の場合は成立しない。天才とは、半歩から一歩時代に先んじていることを言うのだ。逆に言うと、時代感覚に鋭敏でなければいけないから、きちんと社会の中に身を置き、世間と相互作用してなければいけない。鶴岡は少し孤独に過ぎる。

 つまり、ラスト近くの内田朝雄の台詞にあったように、彼は青臭い子供に過ぎないってことなんだろう。

 しかし、真の犯罪者にはなれなかった悪党という魂の持ち主たちへの鎮魂歌、として観ると、なかなかホロリとさせられる。たぶん”アプレ・ゲール”が重要なキーワードなんだろうが、これは残念ながら自分にはピンと来なかった。冒頭の歌唱シーンとラストシーンがいまいち繋がらないのも変な感じ。

75/100(2004/07/23記)

追記)冒頭シーン、蓮池薫さんのお兄さんの勤務先がある、内幸町のプレスセンタービルが映っていてちょっとびっくり。意味は分からなかった。

(評価:★3)

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