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[コメント] 男はつらいよ 柴又より愛をこめて(1985/日)

世のほとんどの男女のドラマは恋愛讃歌だが、フラれ男の失恋遍歴を描いてきた本シリーズは、恋愛によらない男女の結びつきを肯定する応援歌みたいな境地に到達したようだ。
G31

**ネタバレ注意**
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 調布の空港で、真知子先生(栗原小巻)が乗り込んだバスは、係りの人が「新島行きの方〜」と案内していたバス。先生はそのまま飛行機に搭乗したが、ちゃんと式根島に帰れたのだろうか。

  ◇  ◇  ◇

 特に栗原の演技がそうだが、全体的に空々しさが漂う作品。真知子先生は仕事への姿勢が定まらず、15年も辺境の離島で女先生をしてきたように見えない。もっとも、仕事への姿勢が定まらないという風情は、栗原にうってつけの役どころに思えたが。それにしても、死んだ親友の元亭主(川谷拓三)から求婚されたりして、気持ち悪くないのだろうか。多少の葛藤は示しつつ、すんなり受け入れたように見えたけど。あけみ(美保純)の話も、毎回同じ。夫婦喧嘩して、旦那のもとを飛び出して、今回は下田まで来て寅とマドンナのキューピー役(キューピッドには毛が3本足りない)まで務めたけど。島の純朴な青年風から求婚までされて、何か心境に変化でもあったかと思いきや、ただ不倫には走らないというだけで、元の木阿弥に。もういいよ。もっとも、本シリーズでは多分初めてのヌードシーン(後ろ姿で、超遠景だが)を演らされたりして、これまでそんな素振りはなかったのに、結局美保はこんなために起用されたのかと、可哀相に思ったが。下田や式根島の空が抜けるように真っ青で、柴又の空さえそう見えた。これはまあ、空々しいとは違うけど。

 真知子先生の言っていた、「身を焦がすような恋愛や、叫び出したいほどの悲しい気持ちは、一生胸の奥に鍵をかけてしまっておく」態度を肯定し、支援するのが本シリーズの立ち位置なのだということは分かった。僕なんかが知った風に言える義理もないが、本当に好きになった相手と結婚するのでなければ、結婚なんてしないほうがいいのではないか。恋愛を知らぬ者が恋愛を語っているように見えてしまうという点が、本シリーズへの最大の批判の一つだろうと思う。

  ◇  ◇  ◇

 島の小学校の同学年11人全員が島外に出て行ってしまってる。現代から見れば、今後、島の児童数が激減するのは目に見えている。そんな行き詰まり感というか、先行き不透明感などが少しでも触れられていたらなと。少なくとも本作の脚本の出来は、優れているとは言えないようだ。

75/100(19/6/29見)

(評価:★3)

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このコメントを気に入った人達 (1 人)けにろん[*]

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