[コメント] 恋人たちの予感(1989/米)
映画を見終った人むけのレビューです。
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まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。
(短歌でコメントシリーズ・好評につき?第3回)
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「男と女の間に友情は成立するか」なんてのは、逃げ道を作っておきたい男の言い訳なんですよ。ノラ・エフロン、女なのによくわかってるなあ・・・
「俺はお前のことが好きなんだ!」と言って「私はあんたの事なんか別になんとも思ってないわよ」と切り返されたらショックだから、遠回しに口説き始める男っているでしょ(たいていみんなそうですが)。
ハリーも、シカゴからニューヨークに向かう車の中で、振られるのがイヤだからといって魅力的と感じる女性を口説かないのは腰抜けだという訳で(違う?)、サリーを口説くのですが、やはり真正面から振られるのはイヤなわけで、通回しに入っていきます。挙句、「男と女の間に友情は成立しない」なんて言ってしまう。
こう言っとくと、あとで「ダメだったけど、俺はチャレンジしたけど駄目だったんだ」と思えるわけです。「俺は口説いたけど、口説かなければ友達くらいにはなれたかもしれない、そうすれば恋愛に発展したかもしれない、でも俺は口説いたから友達になれなかったんだ」と思って、あっさり振られたという事実を糊塗できるわけです。しかしこんな言葉を口走ってしまったばっかりに、数年後、言葉の呪縛に縛られるわけです。
ハリーが妻のヘレンと別居し、サリーが6年つきあったジョーと別れた直後、偶然再会した2人は、秋深いNYの街でデートみたいなことをします。ヘレンとの離別に傷つき、珍しく女性を口説こうという熱意のないハリーは、自分を素直にさらけ出すことが出来ます。10年前、頭はいいけど皮肉屋で思い込みの激しい男だったハリーが、ソフトでユーモアのある大人になっていたことを発見したサリーは、彼に好意を寄せます。
SALLY: Would you like to have dinner with me sometime?
女性の方から誘いをかけたわけです! それに対してハリーが答えたのは、
HARRY: ...Are we becoming friends now?
昔自分が言った言葉の呪縛に縛られているわけです。ちょっと期待ハズレの答えが返ってきたサリーは、どう反応していいかわからず、
SALLY: Well...yeah.
と曖昧に答えます。それに対してハリー、
HARRY: Great. A woman friend. You know, you may be the first attractive woman I've not wanted to sleep with in my entire life.
オー・マイ・ガー、です。捉えようによっては、ほとんど拒絶ですよ、このセリフ。「あなたは魅力的だけど寝たくはない」こんな失礼極まりない言葉を、それと気づかず言ってしまったハリー、阿呆です。しかもその後ハリーは、いろいろな女とファックしまくるわけですから、こんな侮辱はないです。サリーにしてみれば、セックスが介在しないふりをして、ハリーの「友達ごっこ」につきあうしかなかったでしょう。ハリーにとってはもちろん、サリーにとっても、それはそれで気楽でいい関係だったようですが。
中略
そうして2人は結ばれるべくして結ばれたのですが、まだ言葉の呪縛に縛られているために、あろうことか、結ばれた一夜を“mistake”の語で片付けてしまうのです!フツー、こんな大きな過ちを二度も繰り返す男は、その後の人生を寂しく孤独に生きていくことになるでしょう・・・。
中略
それだけに、ほとんど愛を告白しているハリーに、「私はあなたの“consolation prize”ではない」とサリーがぴしゃりと言うのは当然です。さすがのハリーも深く落胆しますが、それでも、一人寂しく過ごす大晦日の晩に、ようやく思いなおして、サリーのもとへと走っていくハリー、駆け付けて“I love you.”と伝えるハリー、聞く耳持たないサリーにすがりつく惨めなハリー、思いの丈をぶちまけるハリー、サリーへの愛をしゃべりまくるハリー、お前はエライ、勇敢だ、男だ、男の鏡だ、泣いた、感動した、素晴らしい映画だ〜〜〜!!!
・・・私めはまだまだ修行中でございます。
85/100(01/10/20記)
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