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[コメント] 娘・妻・母(1960/日)

役者陣は豪勢だが、スター扱いはせいぜい原節子くらいで、あとは監督の駒。こうゆう作品を評価した当時の人たちって、なんと映画を見る目が肥えてたのだろう。
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 劇的なエピソードはむしろ省略される。その波紋の交錯が作る紋様にこそ人生を擬す、1枚のタペストリーのような成瀬的映画世界の真骨頂。 

 私は、成瀬巳喜男の作品群において、『浮雲』はあらゆる意味で別格であると考えている。

 それに対して、登場する役者陣はもちろんだが、彼が描いてきた人間関係、彼が駆使してきたコンティニュイティの技法、彼の得意とするエピソードの選び方と、その編成方、そういったものの集大成と呼べるような重量感が、『娘・妻・母』にはあると思う。成瀬映画を構成する諸要素の展示会のような作品。寝食を忘れるほどの面白さ、とまではいかないけれど、ああ、いい映画を観たなあ、という満足感に浸れる。

80/100(07/05/24記)

追記)『娘・妻・母』はそれぞれ「父、夫、子」に対応し、そのときどきにおいてそれらの従であり続ける、つまり「女は三界に家なし」を念頭に置いたタイトルだと思うが、成瀬の映画を観ていると、男にだってそんなもの(家)があると考えるのは幻想にすぎない、と思わされる。

(評価:★4)

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このコメントを気に入った人達 (4 人)牛乳瓶 ぽんしゅう[*] のの’ 直人[*]

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