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[コメント] 流れる(1956/日)

いつかエラくなってウチで女中さんを雇えるようになったら、やっぱり「お春さん」と呼ぶことにしよう。
G31

 廃れゆく世界で、上手く立ち回り生き延びる者と、立ち回れずに取り残される者。立ち回れる者こそ、裏も表も知りつくしたその世界の代表者なのだろうが、取り残される者の方に案外美が宿っていたりする。『流れる』はそういう世界を描いた作品だと思う。栗島すみ子田中絹代中北千枝子賀原夏子らと比べたときの山田五十鈴の美しさには、まさにそういった風情がある。この意味でも、要石的な存在感を発揮していた栗島すみ子の起用が、成功の大きな要因だろう。こういった女優陣のコラボレーションは、さすが成瀬巳喜男というところだ。

 そんな中で、そういったこととは関係なしに、岡田茉莉子 は若くて綺麗だったし、杉村春子はお婆さんだった。岡田の、若さゆえの活力ともとれる魅力は、玄人の世界に身を置きながら素人の清潔さを合わせ持って、まさにこの世界を内側から脅かす存在として機能していた。杉村春子に関して言うと、まったく本職にしか見えなかった。

 高峰秀子はこの作品では添え物的な存在だったが、「男を知ってるってことがどうして自慢になるのよ!」と憤ってみせるシーンなんかは上手いもんだ。

80/100(07/06/24記)

(評価:★4)

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このコメントを気に入った人達 (3 人)けにろん[*] 直人[*] 緑雨[*]

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