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[コメント] 彼岸花(1958/日)

ここにいるのは、理屈っぽい男たちと、それを柳に風と受け流す女たち。いまや世の中、男ばっかりになってしまった。ん?女ばっかりか?
G31

 同じような役者陣に、同じような話。先日DVDで観た『秋刀魚の味』(1962)と比べての話だが、一番衝撃を受けたのは、カメラの切り取る構図が、同じ様、ではなく、まったく同じだったことだ。会社の廊下、執務室の位置、事務デスクに向かって仕事する姿、訪問客が部屋に入ってくるところ、帽子掛け、ビル街が作り出す空間、バーのある小路のたたずまい、アパート、居酒屋の構え、居酒屋の個室に着席する三人を、通路側から撮るその角度・・・。さらに言うと、テーブルの三方に座るこの三人を、会話を追って順に正面から捉えるカメラが、やがて4人目の空席に落ち着くところまで、まったく一緒だった。(映画を見た順番は逆だが)こ、こんな技術的怠慢が映画で許されるのか、と素直にびっくりした。

 一つわかったのは、常に超ローアングルのカメラの位置(例えば、会社の廊下の場合、歩いてくる人の膝より明らかに下。家屋内の場合など、ほとんど足首くらいの高さである)、これは劇場の客席(前の方)からスクリーンを見上げる角度でなぜかしっくりきた。ちょうど舞台の上で起きている出来事をかぶりつきで眺めている感じ。これが何を意味してるのかってのは、やっぱりわからないけれど。

 allcinemaonlineのIkedaさん(←凄い人)によると、廊下の長ボウキが逆さに立て掛けてあったのは、長居する客が早く帰るようにという意味なんだそうだ(知らなかった)。物事がきちんと収まってないと気のすまない人が、よその家の物なのに勝手に直しちゃった、そんなおかしみを描いたシーンかと思ってたけど、浪花千栄子のちゃっかりしたキャラクターを表したシーンだったんだな。どっちにしても笑えたからいいけど。

 きわめて感覚的な言い方になるけど(いつもそうだが)、『秋刀魚…』の方が物語の完成度というか洗練度は上回ってるかな、と。この『彼岸花』の方が、詰め込んだテーマが多岐にわたり、話が収束しきれてない感じ。感じだけどね、あくまで。

 今ふと思い出したのでもったいないから書いておく。ビールが違った。確か『秋刀魚…』はすべてサッポロだった気がするが、これはアサヒで、『秋日和』(1960)はキリンだった気が。違ったかも。

85/100(04/11/03見)

(評価:★4)

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このコメントを気に入った人達 (1 人)けにろん[*]

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