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[コメント] 25時(2002/米)

モンティは”アメリカ人”であり、”アメリカ”を体現している。原作のテーマはわからないが、9.11との化学反応により、クールかつ抑えた演出にかかわらず、これまでのどのスパイクー・リー映画よりも、すさまじいメッセージ性を獲得した。
すやすや

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

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原作はどうなのかわからないのだが、この映画で主人公モンティは、アメリカ人とアメリカとして描かれていると思う。

アイルランド系でプロテスタントでNY生まれの彼は、最初にアメリカ大陸に来たアメリカ人を意味しているように思われる。

そこで彼は、普通の市民を装いながら、麻薬の売人として子供達をヤク中にしている。これは、今のアメリカが正義を装い、海外に対してガンガン兵器を売り、その国を政情不安にしているメタファではないか。傷だらけの犬を助ける優しさを持ち、古くからの友人もいて、ハンサムなモティは、一見するところは、いいアメリカ人であるが、実のところ罪人なのである。

彼はだれからのタレコミによって警察にあげられるわけだが、彼は恋人のプエリトリカンを疑う。これは、9.11以降、イスラム教徒やマイノリティをとりあえずテロリストとして疑うNYそのものではないか?

最後に彼は西(テキサス)へと流れ、そこで幸せな家庭を築いて一生を終えたかのように描かれる。しかし、これは父親による、「そうすれば、いいさ」の話で現実にそうなっているわけではない。最後のカットの傷だらけのモンティの顔でもわかるように、父親の話は彼の妄想であり、確定していないのである。

父親の話は、大昔の典型的なアメリカ人(白人)の話である。東部で失敗したものが西(テキサス)に行き、幸せに暮らす…。アメリカではよくあるイイ話…。家族全員が白の服を着ているのも明らかに意図的だある。しかし、この映画はそのことを肯定してはないない。最後のモンティの傷だらけの顔のカットは、罪人でありながら、幸せに暮らす”アメリカ人”と”アメリカ”に疑問を呈するカットである。つまり、スパイク・リーは”アメリカ人”を許していないのである。これまでに徹底的に黒人映画にこだわり続け、過激なメッセージを発し続けた彼が、白人を主人公の映画を撮った理由がここでわかった。

これまでのスパイク・リーのように声高にメッセージを叫ぶのでなしに、アメリカ人とアメリカとそして9.11を描いたこの映画は間違いなく傑作であり、スパイク・リーの最高傑作である。

(評価:★5)

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このコメントを気に入った人達 (11 人)たろ[*] deenity[*] blandest 浅草12階の幽霊 リア 死ぬまでシネマ[*] はっぴぃ・まにあ[*] 町田[*] makoto7774[*] わっこ[*] ジョー・チップ

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