構成、演出の妙。客が自然に劇中に引き込まれる。台詞やシチュエーションに酔うことができる。緻密に計算され、配置された秘密がひとつ明かされるたびに、収束に向かうと思われた舞台は急展開し、新たな混沌を産む。その緩急の気持ちよさと言ったら･･･。

ひとくせあるキャラクター達を単にキワモノとして扱って安い笑いを拾うのではなく、温かい視点を持って描くことで僕たちに深い感慨を与える。佐藤監督の懐の深さを思います。

さて、宍戸問題ですが、僕は「あり」で。最後に安心しきっている客に突然委ねられた「鍵」、再び訪れた緩急によってその先の予感が広がる。そしてこれまでこの劇に付き合ってきた僕にはその予感は悪いものではなかった。つまり、そこで切る余韻は僕にとってむしろ深く、しみじみと良かったからです。