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[コメント] デジモンアドベンチャー(1999/日)

あまりにも鮮やかな、2つの時間の見事な融合!
カズ山さん

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







映画を構成する要素としての映像と音楽は、元はそれぞれ固有の時間を持っている。例えば映像なら、それが再生される時間を。そして音楽は、それ自体のリズムやメロディーで表される時間を。

だから、この2つを合わせたとき、本来なら別々の時間がぶつかり合って衝突が起こってしまう。それを解消するため、普通の映画では映像の時間が主体となり、音楽の時間はその従属物になることが多い(この逆になると、いわゆる「シーンに対してBGMが饒舌or過剰すぎる」という感想が発生する。また意図的にこれをするのが、音楽が主体になるミュージック・クリップだ)。

この「デジモンアドベンチャー」という作品は約20分ほどの短編だ。それゆえストーリーは少年とモンスターの出会い、と極めてシンプルな構成で、さらに音楽はほぼ、モーリス・ラベルの「ボレロ」一曲しか使っていない。だがまさに、内容を盛りだくさんにできない短編であることを逆手に取り、この作品は難しい2つの時間の融合を鮮やかに見せてくれる。

この作品では、卵→幼体→成体→最終体と成長を[くり返し]ながら、卵から巨体へ、つまり[ミニマムからマックス]へと大きさを変化させていく異世界のモンスターを映像で提示する。一方、BGMとして使われる「ボレロ」は、同じメロディーを[くり返し]ながら、徐々に楽器の数を増やして音を[ミニマムからマックス]へと変化させていく音楽だ。

映像と音楽、その両方で提示される[くり返し]と[ミニマムからマックス]という主題。この共通する主題によって映像と音楽、2つの時間をシンクロさせ、見事に、本当に見事に一本の時間として紡ぎ出しているのだ。これこそ様々な要素が絡まりあって、ひとつの時間を生み出していく映画の至福。それがたった20分の短編で味わえるとは…!

(評価:★5)

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