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[コメント] パニック・ルーム(2002/米)

粗が目立つことは否めないが、娯楽作としてはとりあえず合格。だが、所詮普通のサスペンス映画の域から脱していない。フィンチャーにはもっと上を行ってもらいたかった。
Keita

**ネタバレ注意**
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 総合的に見たらそこそこ楽しめる娯楽映画なのだろうが、そのレベルに留まってしまっている。それなりに緊張感もあり、飽きずに見られる。デビッド・フィンチャー自身がこの映画をポップコーン・ムービーと豪語しているだけに、その視点で見たら合格点をつけても良いかもしれない。だが、自分がデビッド・フィンチャーに求めているものとはこの映画はかけ離れていた。

 緊張感があって面白いとは言っても、やはり見終わった後には物足りなさを感じてしまった。本当に普通の映画で終わってしまっているのだ。この手のサスペンスなら90年代以降様々なものが作られてきた。その中でこの映画が後になって自分の記憶に残っているか?おそらく残っていないだろう。『ファイト・クラブ』で衝撃を与えた監督だけに、フィンチャーにはこんなに普通のサスペンス映画を作って欲しくなかった。主観的な願望が強い意見だが、彼にはネクストレベルを目指してもらいたいのだ。

 さて、映画を見ていて思ったことだが、自分は正直言ってこの映画の演出は巧いんだか、下手なんだが甲乙つけがたかった。家全体を巧く映し出したカメラワークは巧いと思うし、ハワード・ショアのスコアも映画を盛り上げているとも思う。サスペンスとして緊迫感を出すための演出として良い部分はある。だが、少々行き過ぎた演出も目立った。配線や懐中電灯などをアップで追う映像を見ると、すごく作られた感じが露骨に見えてしまった。ガスに火がつき青い炎が燃え上がるシーンではあまりに作為的で唖然としてしまった。携帯電話を拾いに行くシーンのスローモーションも逆に緊迫感を弱くしてしまった。

 ストーリーや設定に関しても粗が目立つ。パニック・ルームという着眼点は面白いのだが、ストーリー自体に謎が無さ過ぎる。もっと巧妙な脚本ができていたらすごく魅力的な題材だっただろう。また、敵キャラクターのあまりの情けなさに愕然とした。まるでコメディのような噛み合わなさ。注目していたジャレット・レトなんて本当にどうでも良い様な存在だった。そして、終盤の展開を見ると、今まで何度も見てきたような展開。最後は敵と肉体戦で蹴りをつけてしまう。少なくとも今までは頭脳戦が繰り広げられていたはずだが・・・。フォレスト・ウィティカーのくだりのエピソードも残念ながらピンと来なかった。それまでは文句付けつつも素直に緊張して見られた部分あったが、終盤の展開に関しては本当に嫌気を感じた。

 ちなみに、オープニング・ロール。あれはアイデア的に面白いし、目を見張った。ニューヨークの街並みをあんな形でデザインとして利用するセンスには関心した。また、ジョディ・フォスターが銃を構えるシーンを見て、自分は思わず「クラリス・スターリング復活!」と思ってしまいました・・・。

(評価:★3)

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