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[コメント] 大学の若大将(1961/日)

私的東宝喜劇論そのニ:「若大将映画」の万能性について
町田

「若大将シリーズ」を単に「現在の」加山雄三があまり好きじゃないから、という理由で避けていた俺という男はなんと愚かであったのだろう。いや、というより、そういう偏見を持った俺のような若造をあっさりと宗旨替えさせてしまう、排斥者を崇拝者に一変させてしまう程の魅力を備えた「若大将シリーズ」が余りにも素晴らしすぎるのだ。

スポーツ、音楽、喜劇と、若大将のマルチなタレント性もさることながら、彼を支える助演、脇役、スタッフが本当に素晴らしく、従ってそこに生まれる空気も羨望を禁じえない程に朗らかで、そのためだろう、このシリーズは真正面から評価しても、斜に構えても、ミーハーにかじりついても、マニア、サブカル的見地からこねくり回しても愉しめるという、全く劇中の若大将を地でいくような、稀有なる「万能性」を備えるに至っている、それが「若大将シリーズ」なのである。

ヒロイン星百合子は誰が見たってキュートだし、これで人気を決定付けた青大将こと田中邦衛のトリックスターぶり、大ベテラン飯田蝶子の滲み出る温かさ、有島一郎の頑固さととぼけた味わい、屈折していながら人柄の良さを失わない江原達ヨシ、など魅力的なレギュラーキャラクターに、左ト全、中丸忠雄、藤木悠をはじめとする豪華で奇妙な準レギュラー、ゲストを加え、絶妙なテンポでギャグがパレードしていくんだからもうたまらないのだ。

また音楽がいい。映画界最強POPなメロディメイカー広瀬健次郎の仕事ぶりもさることながら、それを歌う若大将のリズム感のいいこと!ギターが巧いし又吹き替えでも実にそれっぽいし。アイドルタレントが偽音楽家を演じる偽音楽映画なら腐るほどあるがこの「若大将シリーズ」はそんなモンとは全く次元が異なるのである。

長々と書き連ねてきたがとにかく俺は若大将シリーズが好きなのだ。東宝喜劇が好きなのだ。

だから俺は、映画館でオバサマ達の嬌声に包まれようが、毎回パターンが同じだろうが、妹が可愛くなかろうが、憎きボッちゃん大OBだろうが、胸毛が濃かろうが、○○疑惑があろうが、若大将とその仲間たちに付いていくのである。

若大将万歳!クレージー万歳!三木のり平万歳!

おわり。

(評価:★5)

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