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[コメント] ブルジョワジーの秘かな愉しみ(1972/仏)

ブニュエル晩年の傑作であり遺言と言える作品。ロシアのミハルコフとはまた異なるブルジョア社会の退廃を見事に描いています。
chokobo

スペイン人のブニュエルの映画人生とは放浪の映画人生ですね。この作品はフランスにおける作品で自身が原案を作っています。

ショッキングシーンの連続でハラハラドキドキですが司教が病人に銃口を向けるシーンは格別の衝撃を与えます。これがブニュエルですね。彼にはこだわりというものがありません。映像から生まれる衝撃性を一途に求めています。『アンダルシアの犬』から始まって、これらのショッキングなシーンは彼とって当たり前のことのように表現されています。

フランス映画は本国の芸術家だけでなく幅広く多くの才能を自国のポリシーで遠慮なく映画化できる国なんですね。日本でいえば黒澤明大島渚がそうです。ここでもセルジュ・シルベルマンというプロデューサーが担当しているわけですが、世界各国の有能な才能を発掘しています。

ニキータ・ミハルコフもロシアのブルジョア社会を描く監督ですが、彼の作品にはある程度原作があって脚色することで才能が発揮されていますし、自身の階級も高い。ブニュエルは客観的です。客観性の高い映像感覚はブニュエルが評論家体質だからなんですね。ミハルコフとはそこが異なる。ブニュエルの貴族趣味はどこかクールですね。

ブニュエルがフランスと深く関わりを持ち始めたのが『小間使いの日記』あたりからですがシルベルマンとの関係もここからスタートしています。それまでメキシコを中心に活動していたブニュエルが長い放浪の末ヨーロッパに戻り、フランスを舞台にこの作品を作ったところに深い味わいがあると思います。

それほど長くない映画なのに、映画の中に詰め込まれている情報は限りなく多く、不慣れな者に混乱と衝撃を与えるでしょう。ブニュエルの狙いそのものですね。

(評価:★5)

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