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[コメント] フリークス(1932/米)

一番コワいものは何なのだろうか。
くたー

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







表向きは寓話的な体裁をとっているように思える。

いわば「持つ」モノと「持たざる」モノの構図。「肉体だけがとりえで中身が空っぽ」(ヘラクレスを称してこんなセリフがあったような)な健常者と、紳士的な心を持ち合わせながらも一般的に見て十分な体が与えられなかった身障者。そしてその間で身障者たちに肩入れするのが、常に舞台で異形を演じて観客から笑われる道化師。満足いく肉体よりも、健全な精神が勝利する、という筋書きなのだろうか。

ただそれよりも個人的に思ったのは、「怪物」というコトバ。彼らは生まれながらにして「怪物」なのではなくて、健常者によって「怪物」にされているのだと、嵐の夜の顛末を見てつくづく思う。確かにヘラクレスやクレオパトラが同情し難いキャラである事もあって、勧善懲悪というスッキリした構図で見ても良いのかもしれない。しかし雷の光に照らし出された身障者たちの姿を見て、背筋が寒くなるのを禁じ得なかった。健常者たちの仕打ちによって、ついに紳士的な彼らの心の中の「怪物」までもが呼び覚まされてしまったのか、と・・・。

非常にいろいろなものを含んでいて、意義のある映画だと思う。とはいえ、どこまでがこの監督のネラいだったのか、結局のところかなり釈然としない。『魔人ドラキュラ』を作った監督が、『フランケンシュタイン』に人気を奪われて捻り出した企画、ということを考えただけでもかなり胡散臭い。描写に作為の目立つところも結構あったりするし。結局のところ「見世物」であることに、変わりはないような気もする。でも演じてる彼らにとってはコレも社会復帰なのかなぁ、と思うとなおさらフクザツ。

それでも何より評価したいのは、思いがけずに「フリークス」と言われている人の生活の普通振りを、画面の中に再現していること。健常者から見て自由がきかないと思うのを裏切るように、当たり前のように日常の雑事をこなしている姿が痛快であったりする。丁度こちらが手を差し伸べようとしつつ、その手を思わず引っ込めてしまう感覚。そしてもしやその「手」は偽善だったりしないだろうか、なんて。

(評価:★4)

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