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[コメント] 桜桃の味(1997/イラン)

前半部、これほどの不安感を覚えた作品もない。そして、これほどの挑戦的な作品ならば、どんなラストを持ってくるのかと、ついこちらも挑戦的に見てしまう。
sawa:38

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







監督はしてやったりと、ほくそえんでいるのか?

ただし罠に嵌った私のような「芸術魂」がない観客には、たんなる「楽屋落ち」にしか感じられなかった。

例えそれが、主人公を「記号化」する事であったり、「実在しない象徴」とする為のものであっても、ストーリーに感情を移入してきた観客に対しての仕打ちとしては許せるものではない。

だが、前半部の若い兵士との絡みは興味深かった。理由もわからないままに連れてこられた兵士。観客はアノ兵士とまったく同じ状況に置かれ続けたのだ。ホモ親爺かとの疑念さえ浮かぶ逃げ場の無い車の中で、観客に不安が拡がる。助手席のカメラポジションを奴の「逝った」目線で見つめられると、こっちまで奴に値踏みされてるようだった。

例えが悪いかも知れないが、スピルバーグの『激突』での、アノ訳の判らない不安感と同一の恐怖を感じたのだ。

この作品は、そういう所を評価するような作品じゃない事は承知しています。「人間の何たらかんたら・・・を鋭く・・・」というような小難しい作品なのでしょう。カンヌが諸手を挙げて拍手しそうな作品ですね。

ただ私はやっぱり前半部のアノ不安感と恐怖感に秀逸さを感じてしまい、だらだらと続く荒れた山道と砂埃の風景に何ともいえない既視感を感じたのです。

ええ、そんな訳でラストがアレじゃなければ★5をつけてたかも知れませんでした。ついついこちらも挑戦的になってしまう「変な」作品でした。

(評価:★4)

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このコメントを気に入った人達 (1 人)鵜 白 舞[*]

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