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[コメント] 252 生存者あり(2008/日)

また低質なごみ日本映画が一つ誕生。テレビ番組しか創ってはいけない人たちが金にモノを言わせて創ったごみ映画。☆2.5点
死ぬまでシネマ

全国のレスキュー隊員の中にはこの映画(『252』)のキャンペーンに付き合わされた方もいるのではないだろうか。早くから公共ポスターと混ざって交番とかにも貼ってあったし。しかし安易に迎合してはいけない。プロとして映画を観れば、きっと腑に落ちない(赦し難い)点が幾つもあった筈だ。その時に感じた違和感・怒り、そういったものがこの映画の本質(正体)なのだ。こんな映画を甘やかしてはいけない。気象庁も、医者も、大阪の社長も、正直に怒るべきである。

観たひとはお解りだろう。逐一指摘するのも憚られるが、この映画には確信犯的な「ごみシーン」が複数存在する。映画の根本をなす「災害」は日本全体を破壊出来る程の力を持つ筈の超巨大台風だが、何故か映画は新橋周辺の地下街の崩落のみで進行する。接近中に起きたであろう地方都市の被害への言及は一切なく、突如首都圏に上陸してほぼ無警告に主人公(とその周囲のみ)を巻込む。このように穴だらけの脚本なのだが「非現実的な設定でも物語に生命を吹込む事は出来る」という原則に免じて、ここは何とか我慢出来ない訳ではない。問題は穴だらけの設定に生命を吹込むどころか茶化してるとしか思えない、数々のナメ切った「ごみシーン」なのだ。

観たひとには説明不要の数あるごみシーンの中でも、まさに「クライマックス」は、主人公による最後の意味不明なマッチョ的行動だ。それを傍観する周囲、そして先に救助された筈の被災者が××の状況、…これは「虚構の演出」という言葉では到底許容しきれない。制作者が観客をナメ切っていない限り出来ない演出である。これは視聴者と一種のなれあい関係を前提とするテレビでのみ赦される手法なのだ。

「こんなの映画である必要があるのか?」という批判、この観点からすれば『踊る大捜査線』とか『HERO』もその範疇と言え、事実こうした批判がこれらの作品にもなされてきた。私はと言えばこれらの作品には比較的寛容だった。その理由を考えてみると、それらの映画はテレビドラマの拡大版である事を明記していた事も大きいと思う。

だからこの映画もテレビ→映画で、『252 -the Movie- 今度は巨大台風だ!』だったら、ギリギリ☆3.0点で済んだのかも知れない。(まあ『ローレライ』で妻夫木と醜態を演じた香椎由宇がエラそうに出ている時点で加点は難しいが。)

(映画に乗じて『252 生存者ありepisode.ZERO』とか『RESCUE 〜特別高度救助隊』とか、後だしジャンケン番組があるようだが、…もう勝手にやって欲しい。)

そして災害救助という、人間の極限を描くべき主題を踏みにじったのも罪が重い。『HERO』ものとは違うだろ。

     ◆     ◆

この映画に関連する形で、以前ここに或る公開前の映画についての予想を書いていましたが、削除しました。その理由は予想を覆して佳作だったからです。予想とは覆されるものなのですね。

(評価:★2)

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このコメントを気に入った人達 (2 人)ヒエロ[*] 中世・日根野荘園[*]

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