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[コメント] 晩春(1949/日)

実は本作が初めて小津安二郎監督との本当の出会いだったのかも知れない。
甘崎庵

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
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 戦後3作目にして、ようやく本来の調子を取り戻した作品と言われる。それだけに監督の持つ普遍的な(?)テーマを封じ込めた作品と言った趣のある作品。最初から最後まで丁寧に決められた物語を追っていくと言う感じ。まさに職人芸だ。

 正直、本作を観ることでようやく小津監督の本当の凄さというものを感じることが出来た。ストーリーそのものより、何というカメラ・アングルをやってくれるんだ!と言うことで。小津映画にカメラ・ワークはない。固定されたカメラのフレームの中に全てを集約している。これは後年の作品全てに共通してるのだが、本作はそのフレームが嫌味なほどに感じられ、正直びっくり。カメラの切り替えで、全く別に撮影されたはずの映像が、完全に時間軸が連続しているように見せる所が見事すぎる。監督が完璧に時間軸を把握してなければ出来ない芸当だ。それと本作で凄いのは冒頭の自転車のシーンと、公園での長回し。全くカメラは動いてないのに、そのフレームに完全に収まって、しかも遠近法を駆使して映像化。そのシーンだけで無茶苦茶感動。後、個人的には、これも小津映画の特徴である、もの食うシーンが小気味良いのも重要か。

 ストーリーの方は、職人監督としての監督の力量を見せつけた感のある展開(つまりはいつもと同じと言うことだが(笑))だが、原節子が溌剌とした姿を見せているのが特徴。元より華がありすぎる感がある原は、こういった抑えに抑えた演技こそがその魅力を引き出す事を表してる。

 余談だが、本作が原節子の初参加作品だが、監督は前々から原に感心を持っていたらしく、初めて会った時は顔を赤らめたと言われる。意外にシャイな監督の側面が窺えて面白いところ。

(評価:★5)

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