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[コメント] 天国と地獄(1963/日)

緊張の連続、豪邸の応接室→列車→刑事部屋→バーなど密室の撮影が印象的な映画。ロケが多い黒澤作品には珍しいですよね。
chokobo

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







 原作エド・マクベインの『キングの身代金』をモチーフにして、誘拐事件を描いた力作。

 前半は、ナショナルシューズという会社の役員が主人公の権藤(三船敏郎)の家で社内権力のかけひきをしているシーンが延々と続く。密室の中で息も詰まるような会話が繰り返される。

 中盤、誘拐事件が発生。列車内での身代金受け渡しが行われる。

 後半は主人公の権藤の心意気に心酔した刑事達が死にものぐるいで誘拐犯を追いつめてゆく。

 原作は誘拐犯を中心に描いているが、映画ではむしろ刑事や会社の乗っ取りを画策していた主人公の会社役員の心情を中心に描いている。

 モノクロ映画で唯一カラーが使われているシーンがとても印象的だが、このシーンはスピルバーグの『シンドラーのリスト』などでも効果的に使われている。

 誰を誘拐しようとも脅迫は成り立つということをテーマに徹底的に正義感を押し通そうとする黒澤監督のヒューマニズムあふれる作品。

 ラスト、刑務所の面会室で対峙する犯人と主人公の緊迫したやりとりは圧巻。評論家は戸倉刑事が犯人を死刑に導く捜査手法はかなら強引ではないか?と語るが、このラストシーンを良く見てほしいと言いたい。犯人と被害者、妄想と現実、天国と地獄がひとつのシーンで見事に表現されている。このシーンを描くには、強引にでも犯人は死刑囚でなければならない。でないとこのシーンの重さは語れない。

(評価:★5)

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