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[コメント] チャイナタウン(1974/米)

ジャック・ニコルソンは殺されていた!!!
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監督ロマン・ポランスキーによって、彼の命でもある個性は殺されていたのだ!!

この作品のジャック・ニコルソンは普段通りではなかった。彼はいつも出演作品より「先に」ある。簡単にいうと、作品を喰ってしまっているのだ。主演の『カッコーの巣の上で』、『シャイニング』はもちろんのこと、脇での『イージー・ライダー』、『レッズ』、『バットマン』でも真っ先に顔が思い浮かぶ俳優だ。

ところが本作での彼は、いつもの自分の強烈な存在感のスイッチをoffにしていた。これは『さすらいのふたり』のケースに近い。その分、彼が起用される必然性は他作品よりもいくぶん低く感じられなくもない。とはいえども、本策も他の役者だったら面白さは低下したに違いないだろうけど。

なぜ彼の個性は消されていたのか?

答えは作品が彼にどうしても勝たなければならなかったからだ。

「チャイナタウン」はよくぞここまで、と思えるほど徹底的に雰囲気作りに力を入れられている映画だ。ちょっと吃驚してしまうほどだ。この空気こそが、作品の命であり全てといっても過言ではないぐらいだと思う。詳しくは知らないのだが、これが世にいうハードボイルドの世界なのだろうか。好きな人にはたまらないのかもしれない。それほどこういうのが好きではない私でも感心してしまった。とにかく、一つの映画の中に、独自の確固とした世界を築き、閉じ込めた点は評価するべきだろう。

最初、彼のイキが余りよくなかったので、こりゃージャック・ニコルソンを全然生かしきれていない駄作だな、と思っていた。だが次第に気づいてきた。彼の個性に喰われてしまうにはあまりに惜しい映画だと。

世界観を極めること、これが何よりの一途な目的であったのだろう。頑固ささえ感じられてくる。空気を味わう映画なのだ。しかしそれだけだと娯楽性が薄くなってしまい、観客としては退屈してしまうだろうから、ここは一つ存在感のある俳優を連れてきてアクセントにしてしまおう、という意図があったのかもしれない。

おまけとしていうのなら、ジョン・ヒューストンの怪人ぶりも見逃せない。売れない俳優の一生分の仕事をこれ1本で成し遂げているよなあ・・・。

以上をまとめると「チャイナタウン」は雰囲気が主でニコルソンが従という位置関係が見事に効を奏した映画だ、ということです。ちなみにロマン・ポランスキー作品で初めて気に入った作品でした。

(評価:★4)

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このコメントを気に入った人達 (3 人)けにろん[*] はしぼそがらす[*] torinoshield[*]

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